海外FX業者のサイトを見ていると、「当社は複数の金融ライセンスを保有しています」みたいな一文をよく見かけるんですよね。ASIC、CySEC、FSA……ロゴやバッジがずらっと並んでいると、なんとなく「ちゃんとした会社なんだな」という気分になります。
でも、よく考えると変なんですよ。ライセンスは会社ごとに出るものなので、当局が違うということは、そのぶん会社(法人)も別々に存在しているということなんです。じゃあ私が口座を開いたとき、契約相手になるのはそのうちのどれなんでしょう。今回はXS.comを題材に、公式の規制情報ページと法定書類のPDFを突き合わせて、そこを条文レベルで特定してみました。
先に結論:www.xs.comの契約相手はセーシェルのXS Ltd
POINT
顧客約款(Client Services Agreement)の1ページ目には「XS Ltd、セーシェル法に基づき設立、会社番号8428765-1、FSAライセンス番号SD089」と書かれています。48ページの約款を通しで検索しても、出てくる法人名はこのXS Ltdだけ。ASICやCySECの法人名は一度も登場しません。
つまり、www.xs.comから口座を開くと、契約相手はセーシェルのXS Ltdということなんですよね。オーストラリアやキプロスのライセンスは「グループの別会社が持っているもの」で、自分の口座に直接効いてくるわけじゃない。ここ、ちゃんと分けて理解しておいたほうがいいと思います。
XSグループの法人一覧(2026年9月22日時点)
英語版の規制情報ページ(/en/company/regulations/)に、法人ごとの登記国・会社番号・ライセンス番号が並んでいます。私が読んだ時点の中身はこうでした。
| 法人名 | 登記国 | 会社番号 | 規制当局 | ライセンス番号 |
|---|---|---|---|---|
| XS Ltd | セーシェル | 8428765-1 | FSA | SD089 |
| XS Prime Ltd | オーストラリア | 141 194 934 | ASIC | 374409 |
| XS Markets Ltd | キプロス | HE 386563 | CySEC | 412/22 |
| XS Finance Ltd | マレーシア(ラブアン) | LL17310 | LFSA | MB/21/0081 |
| XS ZA (Pty) Ltd | 南アフリカ | 2023/608801/07 | FSCA | 53199 |
| XS Trade Services Ltd | モーリシャス | 224974 | FSC | GB25204786 |
| XSTrade Financial Consultation L.L.C | UAE | 1495925 | SCA | 20200000339 |
| XS United | クウェート | — | (記載なし) | 513918 |
ここまでが規制情報ページの本文なんですけど、全ページ共通のフッターを読むと、リストがもう少し長いんですよ。上の8社に加えて、こんな法人が並んでいます。
| 法人名 | 登記国 | 登録番号 | 役割 |
|---|---|---|---|
| XS (LC) LTD. | セントルシア | 2025-00114 | (記載なし) |
| XS Ltd | セントビンセント・グレナディーン | 27216 BC 2025 | (記載なし) |
| XS Fintech Ltd | キプロス | HE 426566 | グループの技術部門 |
| Ficupay Ltd | キプロス | HE 433983 | XS各社の決済代行 |
「XS Ltd」という名前の会社が、2つある
表を作っていて手が止まったのがここなんですけど、「XS Ltd」という同じ社名が、セーシェルとセントビンセント・グレナディーンの2か所に出てきます。片方は会社番号8428765-1、もう片方は登録番号27216 BC 2025。別の国で登記された、別の法人です。
これ、意地悪をしているわけではなくて、グループが大きくなると普通に起きることなんですよね。ただ利用者の立場からすると、「XS Ltdと契約しました」だけでは契約相手を特定できないということになります。社名だけじゃ足りなくて、登記国と会社番号まで見ないといけない。
私が読んだ範囲では、www.xs.comに置かれている法定書類のPDF6本はファイル名が全部..._XS_Ltd.pdfで、中身の1ページ目にも全ページのフッターにも「セーシェルのFSA、SD089」と書かれていました。なのでxs.comの口座はセーシェル側と読むのが自然です。とはいえ、これは私が外から書類を読んだ判断なので、契約前にサポートへ直接確認するのが確実だと思います。

契約相手が違うと、具体的に何が変わるのか
「どうせ同じグループでしょ」と思いたくなるんですけど、契約書を読むと、ちゃんと違いが出る場所が3つありました。
1. 準拠法と裁判所
顧客約款38.1条はこうです。この契約と取引関係はセーシェル法に準拠し、紛争が起きた場合の管轄裁判所はセーシェルの裁判所。日本の法律でも日本の裁判所でもないんですよね。これはASIC法人やCySEC法人と契約している人とは、まったく別の前提です。
2. 取引の相手方
7.2条には「会社はプリンシパル(相手方)または代理人として顧客と取引を行い、会社が顧客の契約上の相手方になる」と書かれています。つまりポジションの向かい側にいるのは、グループ全体というぼんやりした存在ではなく、契約した1社なんですよ。
3. 投資者補償制度
規制情報ページの末尾に、さらっとこう書いてあります。「投資者補償制度に関する規定は、あなたがどのXS法人と取引しているかによって異なります」。そして48ページの約款を検索した限りでは、補償基金(compensation scheme)に関する条項は見当たりませんでした。ここは「書いていない」までが私に言えることで、「制度が無い」と断定はできません。ただキプロス法人のような補償制度が自分の口座にも付いてくる、と勝手に期待するのは危険だと思います。
契約相手を自分で確認する3ステップ
難しそうに聞こえるんですけど、やることは単純なんですよ。業者を問わず同じ手が使えます。
- 法定書類(顧客約款)のPDFを開いて1ページ目を読む。だいたい冒頭に「社名・登記国・会社番号・当局・ライセンス番号」が固まって書いてあります
- 準拠法・管轄の条項を探す。末尾近くの「Governing law and jurisdiction」。ここに出てくる国が、実質的な契約相手の国です
- フッターの法人リストと突き合わせる。同名の別法人や、本文に載っていない法人が混じっていないかを見る
私はいつも1と2だけ先に見るんですけど、今回は3をやったおかげで「XS Ltdが2つある」に気づけました。ファイル名と1ページ目だけで満足しなくてよかったです。
契約は1社でも、関わる会社は1社じゃない
もう1つ面白かったのが、契約相手は1社でも、実際の取引に絡む会社はそれだけじゃないという点なんですよね。約款を読んでいて気づいたんですけど、お金の流れとデータの流れは、契約とは別のところを通っています。
- カード決済:約款17.2条に「カード取引はXS Ltdの関連会社であるFicupay Limited(キプロス、登録番号HE433983)が処理する」と明記されています。入出金のカード周りだけキプロスの別会社が出てくる形です
- 個人情報:プライバシーポリシーは「XS LtdおよびそのAffiliate Members」を共同のデータ管理者としていて、準拠するのはセーシェルのデータ保護法(2023年)。GDPRでも日本の個人情報保護法でもありません
- 資金の保管:17.7条には、資金を渡した第三者がオムニバス口座(他の顧客の資金とまとめた口座)で保有する可能性があり、その場合破綻時に特定の口座の特定の金額に対する請求権を持てない旨が書かれています
保険の証書も見てみたら、期間が切れていた
XSは「最大500万ドルの追加保険」を掲げていて、証書のPDFが公開されているんですよ。これは正直えらいと思います。実際に開いてみたら、被保険者は「XS Ltd」、引受はロイズ、補償限度はUSD5,000,000でした。サイト側の説明を読むと、1万ドルを超える損害から最大500万ドルまでという建て付けなので、少額の話ではないんですよね。
ただ、2つ気になる行がありました。1つは保険期間が2023年10月10日〜2024年10月9日と書かれていること。もう1つは注記7の「この保険の補償は他の関連会社と共有される」という一文です。つまり500万ドルは1人あたりでも1社あたりでもなく、グループで共有する総額の上限なんですよね。ついでに注記1には「この証書は情報提供目的で、所持する者に何の権利も与えない」とも書いてあります。
注意
掲載されている証書の期間が過ぎているからといって、今の保険が無いとは限りません。毎年更新しているけれど掲載ファイルを差し替えていない、というのはよくある話です。ただ公開情報から確認できるのは2024年10月までの1枚だけなので、保険を決め手にするなら現行の証書を出してもらうのが確実だと思います。
同じページの中でも、表記が揃っていない
ほんとに細かい話なんですけど、規制情報ページの下部にあるライセンスのバッジと、本文のリストが一致していないんですよね。バッジ側は「MOCI 2024/786」「CMA 2020000339」となっているのに、本文側にMOCIは登場せず、UAEは「SCA 20200000339」(桁が1つ多い)。逆にクウェートの513918はバッジに出てきません。
どれが正しいかを外から断定はできません。ただ番号は自分で登録簿に当たって確認したほうがいいという話ではあります。当局名とライセンス番号さえ控えておけば、各当局の公開検索でだいたい引けますから。
日本語サイトのフッターにある一文
最後に、日本語ページを含む全ページのフッターに載っている免責文にも触れておきます。要約すると「当サイトの情報は、それが現地の法令に反することになる国・地域の居住者に向けたものではない。合衆国、EU、オーストラリア、日本などを含むがこれに限らない」という内容です。
これは海外業者でよく見る定型文で、「日本人は口座を開けません」という意味ではありません。日本の金融庁に登録していない業者が、日本国内向けの勧誘とみなされないように置いている一文、と読むのが実態に近いと思います。とはいえ日本の登録業者ではない以上、国内の投資者保護の枠組みの外にあるという事実は変わらないので、そこは納得した上で使うかどうかを決める話なんですよね。
向いている人・慎重になったほうがいい人
ここまで読んで「面倒そう」と思った人、正常だと思います。ただこれはXSが特別なわけじゃなくて、複数拠点を持つ海外業者ならどこでも同じ構造なんですよ。むしろXSは法人一覧も証書も公開している分、確認する材料が揃っているほうです。
規制の中身を読んで納得した上で使いたい人には、ここまで開示されているのはやりやすいと思います。逆に「日本の業者と同じ保護がある前提」で考えたい人には向きません。そこは期待値の置きどころの問題なんですよね。
※本記事の数値・条項は2026年9月22日時点で公式サイトおよび公開されている法定書類PDFを直接確認したものです。書類は改訂されることがあるので、最新の内容は必ず公式サイトでご確認ください。
FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。
まとめ
今回わかったことを、短くまとめておきます。
POINT
・www.xs.comの契約相手はセーシェルのXS Ltd(FSA・SD089)。準拠法はセーシェル法、管轄はセーシェルの裁判所
・グループには12の法人名が並び、「XS Ltd」は同名でもう1社(SVG)存在する。社名だけでは特定できない
・カード決済はキプロスのFicupay Ltd、個人情報はセーシェルのデータ保護法、保険は関連会社と共有。関わる会社は1社ではない
初心者の人へ:まずは「自分の契約相手が1社に決まっていて、その国の法律で処理される」という構造だけ掴んでおけば十分だと思います。バッジの数は、自分の口座の安全性とはイコールじゃないんですよ。
中上級者の人へ:今回使った手順(約款の1ページ目 → 準拠法の条項 → フッターの法人リスト)は、どの業者にもそのまま使えます。口座を持っている業者の約款で一度やってみると、けっこう発見があると思います。私はこれをやるようになってから、業者選びで「なんとなく安心」と言わなくなりました。
