XS.comの約款を48ページ読んでみた:1年放置で年50ドルなど、トレーダー側の5つの義務

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口座開設のときに出てくる「約款に同意します」のチェックボックス、正直ちゃんと読んでる人ってほとんどいないと思うんですよね。私も昔はそうでした。

ただ、あれって業者側の権利だけじゃなく「トレーダー側が何をしたら怒られるか」が全部書いてある場所でもあるんですよ。しかも海外FXの場合、日本語の紹介記事にはまず載っていない条項がけっこう混ざっています。

というわけで今回は、XS.com(XS Ltd)の法定書類を実際にダウンロードして端から読んでみました。顧客約款だけで48ページ、全部英語です。読むのは正直しんどかったんですけど、「これ知らないまま口座放置してたら地味に損してたな」という条項がいくつも出てきたので、そこを絞って共有します。

今回読んだ書類(取得日・版数つき)

XSの法定書類は、公式サイトの「Legal Documents」のページにPDFで置いてあります。私が2026年9月15日に落としたのはこの4本です。

書類 ページ数 本文末尾の版数
顧客約款(Client Services Agreement) 48ページ 2026年6月 version 1.9
約定方針書(Order Execution Policy) 8ページ 2026年6月 version 1.4
リスク開示書(Risk Disclosure) 11ページ —
利益相反方針(Conflicts of Interest Policy) 5ページ —

以下で「第○条」と書いているのは、この顧客約款(2026年6月版・version 1.9)の条番号です。条項は改定されるので、実際に口座を開くときは必ずご自身で最新版を確認してください。

注意

PDFのリンクに付いている?v=1.0のようなクエリの数字は、中身の版数と一致していませんでした。約款はリンク側が1.4なのに本文末尾は1.9、約定方針書はリンク側が1.0なのに本文は1.4です。版数を確認したいときはリンクではなくPDFの最終ページを見てください。

義務①:1年放置すると、年50ドルずつ削られる(第19.8条)

これが個人的に一番「知らないとまずいやつ」でした。第19.8条にこう書いてあります。

入金も取引も1年間なかった場合、年間固定の管理手数料として50ドル(または相当額)を請求する権利がある。さらに、残高が50ドルを下回っている場合は残高を全額徴収したうえで口座をアーカイブする、と。

「ちょっと試しに少額入れて、そのまま放置」が一番相性の悪いパターンなんですよね。残高別にどれくらいのペースで削られるのか、条文の数字から計算して早見表にしてみました(1ドル155円換算)。

放置時の残高 円換算の目安 1年あたり 年間の目減り率 ゼロになるまで
30ドル 約4,650円 全額 100% 1年
100ドル 約15,500円 50ドル 50.0% 2年
300ドル 約46,500円 50ドル 16.7% 6年
500ドル 約77,500円 50ドル 10.0% 10年
1,000ドル 約155,000円 50ドル 5.0% 20年
3,000ドル 約465,000円 50ドル 1.7% 60年

面白いのは、残高が小さいほど率としては致命的になるってことなんですよ。3,000ドル置いてる人にとっては年1.7%の話ですけど、30ドルだけ残して忘れてた人は初回で丸ごと持っていかれる計算になります。

ちなみに私、この条項を読んだあとに日本語の紹介記事をいくつか検索してみたんですけど、休眠手数料に触れているものは見当たりませんでした。スプレッドやレバレッジの比較は山ほど出てくるのに、ここは抜けがちなんですよね。

POINT

使わなくなった口座は「放置」ではなく「出金して空にしておく」のが正解です。残高ゼロなら削られるものがないので。年1回でも動かしておけば起算がリセットされる書きぶりですが、条文上の判定は業者側の裁量なので、そこに期待しすぎない方が無難だと思います。

義務②:取引せずに入出金だけすると、入金額の3%(第19.9条)

第19.9条はもっとピンポイントです。取引実績がないまま入出金だけが行われた口座については、入金額の3%を管理手数料として請求できると書かれています。しかも「取引活動が通常の水準を下回る」と会社が判断した場合も対象、というかなり広い書き方なんですよ。

3%って数字だけ見るとピンと来ないので、こちらも換算してみました。

入金額 3%の手数料 ドル円0.1ロットの往復コスト換算
5万円 1,500円 約15往復ぶん
10万円 3,000円 約30往復ぶん
30万円 9,000円 約90往復ぶん
50万円 15,000円 約150往復ぶん

※ドル円0.1ロット(1万通貨)で1pips=約100円、往復コスト1.0pips=100円として計算しています。

つまり10万円を入れて、何もせずに出金すると、0.1ロットで30往復トレードしたのと同じだけのコストを払う可能性があるってことなんですよね。「とりあえず入金だけして様子見」が一番割に合わない、という話です。

契約書の細かい条項を虫眼鏡で確認するイメージ

義務③:メールを15日放置すると「濫用行為」に入る(第30.1条)

これは読んでいて一番びっくりした条項かもしれません。第30.1条の「Abusive Behaviour(濫用行為)」のリストに、「15日以上にわたって繰り返しメールに返信しないこと」が入ってるんですよ。

濫用行為と判定されると、会社側は利益の取消・口座の凍結・契約の解除まで取れると書かれています。もちろん実務でいきなりそこまで行くとは思えないんですけど、「サポートからのメールを無視し続ける」ことが規約上そういう扱いになっている、という事実は知っておく価値があります。

しかもここに第27.3条が乗ってくるんですよね。会社とのやり取りは英語で行うこと、と明記されています。さらに第37.1条では、翻訳版はあくまで便宜であって英語版が優先するとも書かれています。

要するに、英語のメールが来たときに「読めないから後回し」を続けるのは、規約の建て付け上いちばんまずい対応なんですよ。届いたら翻訳ツールでもいいので中身だけは確認して、最低限の返信は返しておく。それだけで避けられる話です。

義務④:禁止されている「手法」の輪郭

取引スタイルそのものに関する条項もいくつかありました。ざっくり3つです。

レイテンシーアービトラージ(第7.27条)。価格配信の遅延を狙った取引が確認された場合、取引の取消や予告なしの口座解約に加えて、入金額の5%(上限200ドル)の管理手数料を請求できると書かれています。上限200ドルなので、入金が4,000ドル(約62万円)を超えたところで頭打ちになる計算ですね。

リスクを取らない両建て(第30.1条)。経済的なリスクにさらされないポジションを組むこと、そして同社の複数口座間・他社口座との間で反対売買を持つことが濫用行為として名指しされています。「複数口座の使い分け」と「口座をまたいだ両建て」は別物なので、そこは混同しないようにしたいところです。

ゼロカットの濫用(第31条)。XSは負残高保護(いわゆるゼロカット)を提供していますが、第31条にはこれは想定外の急変動から顧客を守るためのものであって、意図的に発動させて利益を得るような戦略には適用しないと書かれています。具体的には、重要指標の直前にヘッジを外して片方をストップアウトさせるようなやり方が例示されていました。

注意

第31.3条には「本条に基づく会社の判断は最終的かつ拘束力を持ち、顧客は異議を申し立てられない」という趣旨の文言があります。裁量の幅が広い条項なので、グレーな取引で挑戦しない、が唯一の対策だと思います。

義務⑤:事務手続きまわりで引っかかりやすい3つ

最後は地味だけど実務で効くやつです。

まず第33.1条(c)。登録情報が変わったとき、住所変更も含めて会社に届け出るのは顧客の責任と明記されています。引っ越したまま放置していると、出金時の本人確認で止まる可能性があるんですよね。

次に第18.1条・第18.2条。第三者名義の入金は受け付けないと書かれています。家族名義のカードや口座から入れるのはアウトです。第18.5条・第18.6条によれば、拒否された場合は送金元に返金されますが、そのときの銀行手数料は顧客負担になります。

最後に第29.1条。解約したいときは10営業日前の書面通知が必要で、通知期間中に建玉を全部閉じるのは顧客側の義務です。閉じずに放置した場合は会社側が期間満了時に閉じられる、とも書かれています。やめるときも段取りが要る、ということですね。

で、結局これは誰が気にすべき話なのか

読み終わって思ったのは、ここに挙げた条項の大半は「ちゃんと取引している人」には関係ないということなんですよ。休眠手数料も3%手数料も、要は「口座を取引以外の目的で使うな」という話に集約されます。

逆に気をつけた方がいいのはこのあたりです。

  • 複数業者に少額ずつ入れて比較している人(放置口座が増えやすい)
  • ボーナスやキャンペーン目当てで口座だけ作っている人
  • 英語のメールを開かない習慣がある人
  • 複数口座やEAで、意図せず両建てに近い状態になりうる人

私自身は検証のために口座を作ることが多いので、「使い終わった口座は残高を空にしてから畳む」を自分のルールに追加しました。読む前は面倒くさいだけの作業だと思っていたんですけど、48ページ読んで得られたものとしては、けっこう実用的だった気がします。

なお、ここで紹介したのはあくまで英語の原本を私が読んで要約したものです。解釈の責任は私にありますし、条項は予告なく改定されます。実際に口座を開くときは、必ず公式サイトの最新版PDFをご自身で確認してください。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

初心者の方へ:覚えて帰るのは2つでいいです。①使わない口座は残高を空にする、②英語のメールは放置しない。この2つだけで、今回挙げた費用系のリスクはほぼ回避できます。

中上級者の方へ:見るべきは第7.27条・第30条・第31条です。複数口座やEAを併用していると、意図せず「リスクのない両建て」の定義に触れる構成になることがあります。口座をまたぐ運用をするなら、事前に読んでおいて損はない部分だと思うんですよね。

約款って読み始めるまでのハードルが高いだけで、読んでしまえば「で、何をしたら怒られるのか」は意外とはっきり書いてあります。気になる業者があるなら、スプレッド比較の前にここを開いてみるのも悪くないと思いますよ。