「損切りを置かない」なら代わりに何を置くのか|想定変動幅からロット上限を逆算する

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「損切りは置かない主義なんですよ」って言う人、たまにいるんですよね。私も昔ちょっとだけそう思ってた時期があるので、気持ちはわかります。損切り注文を置くと、そこだけピンポイントで刈られてから戻っていく、みたいな経験を何回かすると、置きたくなくなるんですよ。

ただ、これは冷静に考えると「損切りを置かない」んじゃなくて、損切りの位置を業者に決めてもらっているだけなんですよね。海外FXにはストップアウト(強制ロスカット)があるので、置かなくても勝手に切られます。しかもその位置は、自分にとって一番都合の悪いところです。

じゃあ損切り注文の代わりに何を置くのか。私の答えは「ロットの上限」です。今回はそれを、想定する変動幅から逆算して数字で出す方法を書きます。式も表も全部自分で計算したので、そのまま使ってもらえると思います。

そもそも「損切りを置かない」は成立していない

まず前提の整理から。海外FX業者の口座には、だいたい2段構えの安全装置が付いてるんですよ。マージンコール(証拠金維持率がある水準を割ったときの警告)と、ストップアウト(さらに割り込んだときに業者側がポジションを強制決済する水準)の2つです。

証拠金維持率っていうのは、ざっくり「今の口座の価値 ÷ ポジションを持つのに要る証拠金」のこと。含み損が膨らむと分子が減るので、じわじわ下がっていくんですよね。

で、ここが大事なんですけど、ストップアウトは「損切りしない人のための救済措置」ではなく、業者が自分の債権を守るための線です。あなたの都合とは何の関係もない位置に引かれています。だから「損切りを置かない」という選択は、実質的には「一番遠くて一番痛い損切りを黙って受け入れる」という選択なんですよ。

POINT

損切り注文を置かないなら、代わりに「どこまで逆行しても耐えられるか」を先に決めて、そこからロットを逆算するしかないんですよね。逆算しないと、耐えられる距離が業者の都合で勝手に決まってしまいます。

置くのは損切り注文ではなく「ロットの上限」

やることはシンプルです。「これくらいは逆行するかもしれない」という変動幅を先に自分で決めて、その距離を生き延びられる最大のロットを計算する。それだけなんですよ。この先に決める変動幅を、以下ではG(pips)と呼びます。指標を跨ぐなら大きめ、日中の短期売買なら小さめ、と自分で決める数字です。

チャートの上でディバイダーを使って距離を測っている様子

ロット上限の式

ロット上限 = 資金 ÷ 【(1ロットの必要証拠金 × ストップアウト水準) + (1ロットの1pips価値 × G)】

分母の中身が何なのかが一番のポイントなんですけど、要するに資金は2つの用途を同時に賄わないといけない、ということなんですよ。ひとつはGまで逆行したときの含み損(これが「1pips価値 × G」)。もうひとつはストップアウトされない最低ラインで、含み損を抱えた後も必要証拠金のうち一定割合は口座に残っていないと切られます(これが「必要証拠金 × ストップアウト水準」)。

この2つを足したものが、1ロットあたりに必要な資金。資金をそれで割れば持てるロットの上限が出ます。ややこしそうに見えますけど、やってることは割り算1回なんですよね。

実際に計算してみた(資金10万円・ドル円155円)

条件を固定して計算します。資金10万円、ドル円155.00円、1ロット=10万通貨、レバレッジ2,000倍、ストップアウト水準20%、他にポジションなし。スプレッド・スワップ・手数料は無視しています。

想定変動幅G ロット上限 必要証拠金 ストップアウト時に残る額
50 pips 1.94 約15,000円 約3,000円
100 pips 0.98 約7,600円 約1,500円
150 pips 0.66 約5,100円 約1,000円
200 pips 0.49 約3,800円 約770円
300 pips 0.33 約2,500円 約510円
500 pips 0.19 約1,500円 約310円
1,000 pips 0.09 約770円 約150円

ざっくり「G=100pipsで約1ロット、G=300pipsで0.33ロット」くらいの感覚です。Gを3倍にするとロットは3分の1、という反比例になってるのがわかると思います。

ちなみにこの表、右の2列を見てほしいんですよ。ここにこの計算のいちばん重要な落とし穴が出ています。後で戻ってきます。

【検証1】ストップアウト水準が低い口座なら、たくさん持てるのか

ここからが自分でも意外だったところなんですけど。海外FX業者って、口座タイプによってストップアウト水準が違うことがあるんですよね。たとえばXS.comだと、複数の情報源で確認した限りではセント口座がストップアウト10%、それ以外の口座が20%という扱いになっています。

直感的には「10%のほうが粘れるんだから、その分たくさん持てるはずだよね」と思うじゃないですか。私もそう思って計算しました。結果がこれです。

想定変動幅G ストップアウト20% ストップアウト10% 差
50 pips 1.940 1.969 +1.5%
100 pips 0.985 0.992 +0.8%
200 pips 0.496 0.498 +0.4%
500 pips 0.199 0.200 +0.2%
1,000 pips 0.0997 0.0998 +0.1%

ほぼ変わらないんですよ。100pipsで0.8%、500pipsだと0.2%。ロットの刻みが0.01単位だと、そもそも差が表示されないレベルです。

なんでこうなるかというと、高レバレッジだと必要証拠金そのものが小さいからなんですよね。G=100pipsのケースだと必要証拠金が約7,600円しかない。その20%は約1,500円で、10%なら約760円。差はたった760円です。一方で100pips逆行したときの含み損は10万円近くある。760円の差なんて誤差にもならないんですよ。

POINT

「ストップアウト水準が低い口座のほうが有利」というのは、少なくとも高レバレッジ帯ではほぼ気にしなくていい差だと思います。私も口座タイプを比較するとき以前はこの数字をけっこう重く見ていたんですけど、実際に計算してみたら順位が変わるほどの差じゃなかったんですよね。それよりスプレッドや手数料のほうがよっぽど効きます。

【検証2】じゃあレバレッジを上げれば持てるのか

同じ論法でレバレッジも試しました。ストップアウト20%で固定して、レバレッジだけ変えます。

想定変動幅G 2,000倍 1,000倍 500倍 200倍 100倍
100 pips 0.985 0.970 0.942 0.866 0.763
300 pips 0.332 0.330 0.327 0.317 0.302
1,000 pips 0.100 0.100 0.099 0.098 0.097

これも予想外に効かないんですよ。G=1,000pipsだと、100倍と2,000倍でわずか3%しか差がない。G=100pipsでも、100倍から2,000倍にして0.76ロットが0.98ロットになるだけです。20倍にしたのに、持てる量は1.3倍。

「高レバレッジだからたくさん持てる」は、ある程度の距離を生き延びたいと決めた瞬間にほぼ成立しなくなります。レバレッジが効くのは「証拠金をいくら拘束されるか」であって、「含み損にいくら耐えられるか」ではないんですよね。耐える原資は結局、口座に入っている資金そのものなので。

逆に言うと、高レバレッジ口座の本当のメリットは「同じポジションを少ない証拠金で持てるので、余った資金が余力として残る」ことにあるということでもあります。ポジションを大きくするための道具として使うと、ここで見た通りほとんど意味がないんですよ。

ここまでの計算の、決定的な落とし穴

さて、さっき「後で戻ってくる」と言った話です。

針が下限の危険域まで振り切ったアナログ圧力計

表1の右端の列、「ストップアウト時に残る額」を見てください。G=100pipsのケースで約1,500円です。資金10万円で始めて、Gまで到達したときに残っているのが1,500円。つまり資金の98.5%が消えています。

注意

この式が出す「ロット上限」は、Gまで逆行したらちょうど資金がほぼ全部なくなるロットです。「Gまで耐えられる安全なロット」ではありません。Gが大きいほどこの比率は悪化し、G=1,000pipsだと残るのは約150円、資金の99.8%が消える計算になります。これは推奨値ではなく、絶対に超えてはいけない天井の値です。

だから実務では、この計算だけで済ませちゃダメなんですよ。もう1本、許容損失ベースの計算を並べる必要があります。こっちは単純で、「1回のトレードで資金の何%まで失っていいか」を決めて、Gpips逆行したときの損失がその額に収まるロットを出すだけです。両方を同じ条件で並べるとこうなります。

想定変動幅G 許容損失1% 許容損失2% 許容損失5% 生存ベースの上限
100 pips 0.010 0.020 0.050 0.98
200 pips 0.005 0.010 0.025 0.49
300 pips 0.003 0.007 0.017 0.33
500 pips 0.002 0.004 0.010 0.19
1,000 pips 0.001 0.002 0.005 0.09

桁が違うんですよね。生存ベースの上限は、許容損失2%ルールのちょうど50倍です。これはどのGでも変わりません。2%ルールが「資金の2%を失うロット」で、生存ベースが「資金の100%を失うロット」なので、比が常に50倍になるという、当たり前といえば当たり前の話なんですけど。

ということは、実際の使い方はこうなります。まずGを決める。次に2本計算する(生存ベースの上限と、許容損失ベースのロット)。最後に小さいほうを採る。ほぼ必ず許容損失ベースが小さいので、実質そっちが採用値になります。

じゃあ生存ベースの計算に意味がないのかというと、そんなことはないんですよ。「自分が今持っているロットが、天井から何%の位置にあるか」を知るための物差しとして使えます。天井の半分を超えていたら、それはもう許容損失25%相当のポジションということなので。

実際にやってみて気づいたこと

POINT

私はこの2本立ての計算を、エントリー前に紙の手帳へ書くようにしています。表計算ソフトでもいいんですけど、あえて手で書くほうが効きました。というのも、ロットを上げたくなるのは決まって「計算が面倒だな」と思った瞬間だったんですよね。手で書く手間を残しておくと、そこで一拍おける。個人的にはおすすめできるやり方だと感じています。

もう一つ気づいたのが、Gを「相場から決める」んじゃなくて「保有日数から決める」と楽になるということです。最初は過去のボラティリティを見てGを決めようとしてたんですけど、これがけっこう難しいんですよ。指標がある日とない日で全然違いますし、後付けでどうにでも言えてしまう。

それで途中から、「このポジションを何日持つか」を先に決めて、そこから日数分のGを積むやり方に変えました。1日あたりの想定変動幅を控えめに見積もって日数を掛ける、というだけなんですけど、こっちのほうが決めやすいし、後からブレないんですよね。

注意

この記事の計算は、スプレッド・スワップ・取引手数料をすべて無視しています。実際にはこれらが有効証拠金を削るので、ストップアウトは計算より手前で来ます。特に長く持つ場合はマイナススワップが効いてくるので、余裕を持たせてください。また週明けの窓開けや流動性が薄い時間帯では、ストップアウトの執行価格が水準どおりにならないこともあります。

口座タイプでストップアウト水準が分かれる業者もある

検証1で触れたXS.comのように、同じ業者でも口座タイプによってストップアウト水準が違うケースはあります。今回の計算だと影響はごくわずかでしたが、条件を確認しておくこと自体は大事なんですよね。

調べた範囲での注意点も正直に書いておきます。複数の情報源で確認した限りでは、XS.comのストップアウト水準はセント口座10%・その他20%で3系統が一致していました。一方でマージンコール水準は情報源によって40%と50%に記述が割れていたので、この記事では数値を採用していません。また、セント口座は1ロット=1,000通貨と契約サイズ自体が異なるため、ロット数だけを他口座と見比べても意味がない点にも注意してください。実際の通貨量に直して比べる必要があります。

いずれも公式サイトで最新の条件を必ず確認してください。この手の数値は予告なく変わりますし、私が調べた時点ではXS.comの口座タイプページはJavaScriptで描画される作りになっていて、条件表を直接読み取れませんでした。会員ページかサポートに確認するのが確実だと思います。

POINT

口座を選ぶときにストップアウト水準を見るのは悪くないんですけど、今回の計算で見た通り、持てるロットへの影響は1%未満でした。それよりもスプレッド・手数料・スワップのほうが、同じ資金で取れるポジションサイズにも損益にもずっと大きく効いてきます。優先順位はそっちだと思うんですよね。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

長くなったので、要点だけ並べます。

  • 「損切りを置かない」は成立していない。置かないだけで、業者が一番遠い位置に置いてくれる
  • 代わりに置くべきはロットの上限。想定変動幅Gを先に決めて、そこから逆算する
  • 式は「資金 ÷ (必要証拠金 × ストップアウト水準 + 1pips価値 × G)」
  • ストップアウト水準が10%か20%かは、ロット上限を1%も変えない
  • レバレッジも同じで、G=1,000pipsなら100倍と2,000倍で3%しか変わらない
  • ただしこの上限は到達時点で資金の98%以上が消えるロットなので、そのまま使ってはいけない
  • 実務では許容損失ベースの計算と2本並べて、小さいほうを採る

結局のところ、損切り注文を置くか置かないかって、あんまり本質じゃないんですよね。置かない代わりに何を先に決めておくかのほうがずっと大事で、そこさえ数字にしておけば、注文を置く置かないは好みの問題になります。この記事の表がその「先に決める」作業の助けになれば嬉しいです。