金曜の夜、ポジションを持ったままチャートを閉じるかどうかで、ちょっと迷うことってないですか。私はけっこう迷うんですよね。「週末に何か起きたら、月曜の朝にとんでもない窓が開いてるんじゃないか」って。
海外FXの解説記事でもこれは定番で、「週末持ち越しは窓リスクがあるから避けましょう」と書いてあるのをよく見ます。でも、その「窓リスク」が平日の値動きと比べて実際どれくらい大きいのかを数字で書いてある記事は、ぶっちゃけほとんど見たことがないんですよ。
というわけで、ドル円の26年分のデータで数えてみました。結論から言うと、週末をまたいだ値動きは、平日1営業日の値動きより「小さかった」です。私も集計結果が出たとき、えっ逆じゃないの? と思って3回くらい計算し直しました。
まず前提: 今回測ったのは「窓」そのものではありません
ここを最初にはっきりさせておきたいんですけど、今回使ったデータは米連邦準備制度理事会(FRB)が公表している統計「H.10」です。各営業日のニューヨーク正午(12:00 ET)時点のレートが1日1本だけ載っている、為替の公式統計なんですよね。2000年1月3日から2026年10月23日まで、ドル円で6,722営業日分あります(2026年10月26日付リリース)。
1日1本しかないので、月曜の朝イチの寄り付きで実際に何pips飛んだか、という「窓」そのものは測れません。測れるのは「金曜正午 → 月曜正午の変化」です。
注意
本記事の「週末ギャップ」は金曜正午→月曜正午の変化であり、月曜オープン直後の窓の大きさではありません。窓は週末の値動きの「最初の一瞬」にすぎず、この統計では分離できません。ただし「週末をまたいで持ち越したときに口座が受ける影響」を知りたいなら、月曜の寄り付きだけより金曜正午→月曜正午のほうが実務的な指標になります。
集計のルールはこうしました。隣り合う2つの観測日のあいだに土曜日が挟まる遷移を「週末跨ぎ」、挟まらないものを「平日跨ぎ」としています。金曜が祝日で木曜→月曜になる週や、月曜が祝日で金曜→火曜になる週も週末跨ぎに入れたうえで、きれいな金→月(3暦日)だけを取り出した集計も別に出しました。
- 週末跨ぎ: 1,398回(うち純粋な金→月が1,203回、祝日で延びたものが195回)
- 平日跨ぎ: 5,323回
結果1: 週末ギャップは平日より小さい
いきなり本題です。変動幅の絶対値(単位はpips、ドル円なので1pips=0.01円)を並べるとこうなりました。
| 区分 | 回数 | 平均 | 中央値 | 上位10% | 上位5% | 上位1% | 歴代最大 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 週末(金→月) | 1,203 | 47.8 | 35.0 | 102 | 136 | 217 | 450 |
| 週末(祝日で延長) | 195 | 59.6 | 45.0 | 138 | 164 | 240 | 292 |
| 平日(1営業日) | 5,323 | 50.7 | 37.0 | 111 | 143 | 239 | 579 |
| 倍率(週末÷平日) | — | 0.94 | 0.95 | 0.92 | 0.95 | 0.91 | 0.78 |
見てのとおり、どの指標で比べても週末のほうが小さいんですよね。平均で0.94倍、中央値で0.95倍、荒れたときの目安になる上位5%でも0.95倍。歴代最大に至っては週末450pipsに対して平日579pipsで、いちばん荒れた日は平日に起きています。
唯一、祝日で3連休以上に延びた週末(195回)だけは平均59.6pipsと平日より大きいんですけど、これは「土日に加えてもう1営業日ぶんの値動きが乗っている」と考えれば自然な話なんですよ。つまり増えているのは『週末だから』じゃなくて『営業日が1日ぶん多いから』なんですよね。
結果2: 曜日で見ても、金曜発が特別なわけではない
「金曜に持ち越すとヤバい」が本当なら、金曜発の遷移だけ数字が飛び出るはずです。曜日別に見てみました。
| 起点の曜日 | 回数 | 平均 | 中央値 | 上位5% | 歴代最大 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月曜 → 火曜 | 1,231 | 46.4 | 35.0 | 126 | 579 |
| 火曜 → 水曜 | 1,382 | 49.3 | 36.0 | 139 | 334 |
| 水曜 → 木曜 | 1,380 | 53.7 | 38.0 | 151 | 439 |
| 木曜 → 金曜 | 1,357 | 53.0 | 39.0 | 155 | 496 |
| 金曜 → 翌営業日 | 1,371 | 49.3 | 37.0 | 142 | 450 |
5つの曜日のうち、金曜発は平均でも中央値でも真ん中あたり。むしろいちばん動いているのは水曜発と木曜発なんですよね。米国の経済指標や中銀イベントが週の中ほどに集中していることを考えると、これはこれで納得感があります。
結果3: 暦日で割ると3分の1。動かしているのは「暦」じゃなくて「市場が開いている時間」
ここがいちばん面白かったところなんですけど、週末は3暦日(金・土・日)あるわけですよ。もし相場が「時間が経てば経つほど動くもの」なら、統計の教科書どおりなら変動の大きさは√3 = 約1.73倍になるはずなんですよね。
実測は0.94倍でした。暦日あたりに直すと、こうなります。
| 区分 | 平均変動幅 | 経過暦日 | 1暦日あたり |
|---|---|---|---|
| 週末(金→月) | 47.8pips | 3日 | 15.9pips |
| 平日 | 50.7pips | 1日 | 50.7pips |
暦日ベースだと週末は平日の0.31倍、つまり3分の1以下です。一方で「1営業日あたり」で見ると0.94倍でほぼ同じ。
POINT
相場を動かしているのはカレンダーの日数ではなく、市場が開いている時間です。土日は市場が閉まっているので、そのぶんの値動きはほぼ発生していません。だから「3日ぶんのリスクを背負う」という直感は、実測では成り立たないんですよね。
結果4: 「たまに来る大荒れ」も週末に偏っていない
平均が小さくても、週末だけたまに特大の窓が開くなら話は別ですよね。なので、平日の分布からしきい値を決めて、それを超えた遷移がどっちに多いかを数えました。
| しきい値 | 週末で超えた割合 | 平日で超えた割合 |
|---|---|---|
| 143pips超(平日の上位5%ライン) | 4.9%(68/1,398回) | 5.0%(266/5,323回) |
| 239pips超(平日の上位1%ライン) | 0.9%(12/1,398回) | 1.0%(53/5,323回) |
見事に同じなんですよね。週末は全遷移の20.8%を占めているんですけど、大荒れの構成比もだいたい同じ水準。「テールだけ週末に偏っている」という説明も、少なくともこのデータでは支持されませんでした。
結果5: それでも歴代の週末ギャップは見ておく価値があります
平均が小さいからといって、全部が小さいわけではないです。実際に大きく動いた週末の上位を並べておきます。
| 週末 | 変動 | レート |
|---|---|---|
| 2008-10-03 → 10-06 | -450pips | 105.76 → 101.26 |
| 2026-01-23 → 01-26 | -369pips | 157.57 → 153.88 |
| 2015-08-21 → 08-24 | -355pips | 122.11 → 118.56 |
| 2008-03-14 → 03-17 | -332pips | 100.20 → 96.88 |
| 2024-08-02 → 08-05 | -303pips | 146.98 → 143.95 |
| 2025-05-09 → 05-12 | +294pips | 145.15 → 148.09 |
| 2022-09-02 → 09-06(3連休) | +292pips | 140.03 → 142.95 |
| 2020-03-06 → 03-09 | -279pips | 105.31 → 102.52 |
上位8件のうち6件が円高方向というのは、ちょっと目に留まりますよね。ドル円のロングを週末に持ち越す人のほうが多いことを考えると、嫌な方向に偏っている気はします。ただ、全1,203回の符号付き平均は+1.4pips(平均の誤差は±1.95pips)で、方向の偏りは誤差の範囲です。上位だけを見て「週末は円高になりやすい」と結論づけるのは、さすがに乱暴なんですよね。
ちなみに平日側のワーストは2022年12月19日→20日の-579pips。この日が何だったかはご存じの方も多いと思いますが、いずれにせよ歴代最大の一撃は週末ではなく平日の深夜に起きています。
結果6: ドル円だけの話じゃなく、7通貨ペア全部で同じでした
「ドル円がたまたまそうなだけでは?」と思ったので、H.10で取れる他の6ペアでも同じ集計をかけました。
| 通貨ペア | 週末の平均 | 平日の平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| USD/JPY | 47.8 | 50.7 | 0.94 |
| EUR/USD | 46.3 | 50.3 | 0.92 |
| GBP/USD | 60.2 | 63.8 | 0.94 |
| AUD/USD | 37.6 | 41.3 | 0.91 |
| NZD/USD | 33.4 | 38.6 | 0.87 |
| USD/CHF | 45.3 | 50.0 | 0.91 |
| USD/CAD | 43.8 | 47.1 | 0.93 |
7ペア全部が1倍未満でした。0.87〜0.94の範囲にきれいに収まっているので、これは特定の通貨の性質というより、「市場が閉まっている時間は値動きが発生しない」という構造そのものから来ていると考えるのが素直だと思います。
じゃあ週末リスクって何なの? 答えは「大きさ」じゃなくて「手が出せないこと」
ここまでの結果をまとめると、「週末は特別に大きく動く」は実測では支持されませんでした。じゃあ週末持ち越しが怖いのは気のせいなのか、というとそうでもないと思っていて、理由は2つあります。
1つめは単純に「約2日間、何もできない」こと。平日の50pipsは、見ていれば途中で切れます。週末の48pipsは、終わってから結果だけ受け取るんですよね。同じ大きさでも、対処できるかどうかはまったく別の話なんですよ。
2つめがレバレッジです。実はここが本丸だと思っていて、同じ48pipsでもレバレッジ次第で意味がまるで変わります。ドル円156.87円(H.10の2026年10月23日分)・1ロット=10万通貨で、必要証拠金に対する比率を出してみました。
| レバレッジ | 1ロットの必要証拠金 | 上位5%の週末ギャップ | 歴代最大の週末 |
|---|---|---|---|
| 25倍 | 627,480円 | 証拠金の21.7% | 71.7% |
| 100倍 | 156,870円 | 証拠金の86.7% | 286.9% |
| 200倍 | 78,435円 | 173.4% | 573.7% |
| 500倍 | 31,374円 | 433.5% | 1,434.3% |
| 1000倍 | 15,687円 | 867.0% | 2,868.6% |
レバレッジ25倍なら上位5%の荒れた週末でも証拠金の21.7%しか動かないので、まあ耐えられます。でもレバレッジ1000倍で証拠金ギリギリまでロットを張ると、同じ値動きが証拠金の8.7倍になるんですよね。
「じゃあそれってどれくらいの頻度で起きるの?」も数えました。1ロットを必要証拠金ちょうどで建てたと仮定して、週末ギャップがその証拠金を超えた割合です。
| レバレッジ | 証拠金=何pips相当 | 週末で超えた割合 | 平日で超えた割合 |
|---|---|---|---|
| 100倍 | 156.9pips | 3.5% | 3.8% |
| 200倍 | 78.4pips | 18.3% | 20.6% |
| 500倍 | 31.4pips | 54.1% | 55.2% |
| 1000倍 | 15.7pips | 74.0% | 75.7% |
ここでも週末と平日はほぼ同じ数字です。つまり危ないのは「週末」という曜日ではなく、証拠金に対してロットが大きすぎることのほうなんですよね。表の「超えた割合」は値動きの向きを問わない数字なので、実際に損失側に振れるのはおおむねこの半分と読むのが妥当です。参考までに、ロングを持っていて証拠金を超える円高が来た週末は、レバレッジ500倍で25.7%、1000倍で35.7%でした。
ロット別の早見表(ドル円を週末持ち越した場合)
最後に、自分の口座に当てはめやすいように金額の表にしておきます。ドル円は1ロット(10万通貨)で1pips=1,000円なので、そこから換算しただけの素朴な表です。
| ロット | 通貨量 | ふつうの週末(中央値) | やや荒れた週末(上位10%) | かなり荒れた週末(上位1%) | 歴代最大 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.1 | 1万通貨 | 3,500円 | 10,200円 | 21,700円 | 45,000円 |
| 0.3 | 3万通貨 | 10,500円 | 30,600円 | 65,100円 | 135,000円 |
| 0.5 | 5万通貨 | 17,500円 | 51,000円 | 108,500円 | 225,000円 |
| 1.0 | 10万通貨 | 35,000円 | 102,000円 | 217,000円 | 450,000円 |
| 3.0 | 30万通貨 | 105,000円 | 306,000円 | 651,000円 | 1,350,000円 |
| 5.0 | 50万通貨 | 175,000円 | 510,000円 | 1,085,000円 | 2,250,000円 |
使い方としては、「歴代最大の列を見て、その金額が飛んでも生活に影響しないロットか」で判断するのがいちばん手っ取り早いと思うんですよね。1ロットなら45万円。これを見て「無理だな」と思ったらロットを下げる、というだけの話です。
「金曜の流れが月曜も続く」はデータ上は言えませんでした
もうひとつオマケで調べたのが、金曜当日の値動きの方向が、週末ギャップにも続くのかです。「金曜に強く買われたから月曜も上で始まるだろう」みたいな読みって、わりとやりますよね。
判定できた1,181回のうち、金曜と同じ方向に動いた週末は552回で46.7%でした。コイン投げ(50%)の標準誤差が±1.5ポイントなので、50%からわずかに下振れはしているものの、実質コイン投げと区別がつかない水準です。
金曜がドル高だった週の週末ギャップ平均は-0.36pips、ドル安だった週は+4.05pips。どちらも週末ギャップのばらつき(標準偏差67.6pips)に比べて誤差みたいな大きさなんですよね。「金曜の勢いで持ち越す」には、少なくともこのデータでは根拠がないというのが正直なところです。
私なりの結論: 週末に備えるならこの3つだけ
POINT
① ロットを「歴代最大の週末ギャップが来ても耐えられる量」に揃える(1ロットなら45万円が目安)。② 3連休の週は1営業日ぶん上乗せして見積もる(祝日で延びた週末は平均59.6pipsと約1.25倍)。③ 金曜の方向感で持ち越し量を増やさない(継続率46.7%は実質コイン投げ)。
データを取る前の私は、週末だけ特別にロットを落としていたんですけど、今回の集計を見てからは「週末だから」じゃなくて「そもそも平日もこのロットでいいんだっけ」という考え方に変えました。週末を避けても、同じ大きさの値動きは平日に普通に来るわけですからね。個人的にはこの切り替えはけっこう良かったと感じています。
注意
今回の集計はあくまで為替レートの変化だけを見たものです。実際に週末をまたぐと、業者ごとに週末前後のスプレッド拡大やスワップポイントの付与日数(いわゆる3倍デー)といった別の要素も乗ってきます。これらは業者・銘柄によって条件が違うので、持ち越しを前提にするならご自身の口座の取引条件を公式サイトで必ず確認してください。
ちなみに、週末持ち越しのコストを実際に詰めていくとスプレッドとスワップの条件差が効いてきます。スキャルピングから中期保有まで条件を比べたい方は、Exnessあたりが選択肢に入りやすいと思いますが、最新の条件は必ず公式サイトで確認してください。この手の数値は予告なく変わるので、記事の数字を鵜呑みにしないのが一番安全なんですよね。
FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。
まとめ
ドル円26年分・週末1,203回を数えた結果をもう一度並べておきます。
- 週末(金→月)の変動幅は平均47.8pips、平日1営業日は平均50.7pips。週末のほうが0.94倍小さい
- 暦日あたりに直すと週末は平日の0.31倍。動かしているのは暦日ではなく市場が開いている時間
- 大荒れ(平日の上位5%ライン超え)の発生率も週末4.9% / 平日5.0%でほぼ同じ
- この傾向は7通貨ペア全部で共通(倍率0.87〜0.94)
- 歴代最大の一撃は週末の450pipsではなく、平日の579pips
- 金曜の方向が週末に続く確率は46.7%でコイン投げと区別がつかない
初心者の方へ: 「週末は危ないから金曜に全部閉じる」は、悪い習慣ではないんですけど、それで安心してしまうのが危ないんですよね。同じ大きさの値動きは平日にも来ます。先にロットを見直すほうが効きます。
中上級者の方へ: 週末プレミアムを織り込んで金曜にポジションを落としている場合、その「落とし幅」が実測の0.94倍という数字に対して過剰になっていないか、一度当ててみる価値はあると思いますよ。逆に3連休の週だけは平均1.25倍になるので、そこは分けて扱ったほうが筋がいいです。
なお今回のデータはすべてFRBのH.10(ニューヨーク正午レート)で、集計スクリプトは自前で書いたものです。1日1本のデータなので月曜寄り付きの窓そのものは測れていないという限界はあるものの、「週末をまたいで持ち越したときに口座が受ける影響」という実務的な問いには、十分答えられる粒度だと思っています。
