4日連続で下げたチャートを見て、「さすがにそろそろ戻るんじゃない?」って思ったこと、ありませんか。私は正直めちゃくちゃあります。
で、この「そろそろ」という感覚、よく考えると根拠を説明できないんですよね。何日続いたら「そろそろ」なのか。3日?5日?そもそも続いた日数と、翌日の値動きって関係あるんでしたっけ。
というわけで今回は、FRB(米連邦準備制度理事会)が公開しているH.10統計のドル円26年分を使って、「同じ方向が何日続いたか」を全部数えてみました。使ったのは2000年1月3日から2026年10月16日までの6,717営業日、そこから切り出した連続同方向の区間(以下「連」と呼びます)が3,401本です。
結論から言うと、「そろそろ戻る」を裏付けるデータは出てきませんでした。というか、連続日数の出方がコイン投げとほぼ完全に一致してたんですよね。これが今回いちばん面白かったところです。
まず「連」の数え方だけ揃えておきます
データはFRBのH.10統計。ニューヨーク時間12時の値を1日1本だけ記録している公式統計で、2000年以降の分が誰でも無料で取れます。業者のチャートと違って「どこの誰が作った値か」がはっきりしてるのが好きなんですよ。
数え方はこうしました。
POINT
営業日=H.10に値がある日。金曜→月曜は「1営業日」として扱います(H.10は1日1本なので、週末のギャップだけを切り離すことができないため)。方向=前営業日比の符号。前日比ちょうどゼロだった日(ドル円で58日ありました)は連を打ち切って、どの連にも入れていません。
この数え方で、ドル円の26年分は上昇日3,427日(51.5%)・下落日3,231日(48.5%)。わずかに円安方向が多いんですけど、まあほぼ五分五分ですね。
連続日数の出方が、コイン投げと誤差1.5本だった
ここが今回いちばんびっくりしたところなんですけど、連の長さの分布を出してみたら、「毎日コインを投げて決めている」と仮定した場合の計算値とほとんど一致したんですよ。
コイン投げなら、1日で終わる連が約50%、2日続く連が約25%、3日が約12.5%……と、きれいに半分ずつ減っていくはずです。実測はこうでした。
| 連の長さ | 円安(上) | 円高(下) | 合計 | 全体に占める割合 | コイン投げなら | 実測/期待 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1日 | 810 | 892 | 1,702 | 50.0% | 1,700.5 | 1.00倍 |
| 2日 | 451 | 423 | 874 | 25.7% | 849.5 | 1.03倍 |
| 3日 | 227 | 202 | 429 | 12.6% | 424.8 | 1.01倍 |
| 4日 | 110 | 97 | 207 | 6.1% | 212.6 | 0.97倍 |
| 5日 | 53 | 53 | 106 | 3.1% | 106.5 | 1.00倍 |
| 6日 | 29 | 21 | 50 | 1.5% | 53.4 | 0.94倍 |
| 7日 | 9 | 9 | 18 | 0.5% | 26.8 | 0.67倍 |
| 8日以上 | 10 | 5 | 15 | 0.4% | 27.1 | 0.55倍 |
1日で終わる連は実測1,702本に対して計算値1,700.5本。誤差1.5本です。2日・3日・5日もぜんぶ0.97〜1.03倍の範囲に収まってます。
つまり「3日も続いた」「5日も続いた」という体感は、ランダムな系列を眺めているときに人間が必ず感じてしまうものであって、ドル円固有の性質ではないということなんですよね。
ちなみに26年で最長だったのは11日連続の円安で、2022年10月5日〜10月20日。累計550pipsでした。あの時期を覚えてる人にとっては「あー」って感じだと思います。次点が10日連続で3本(2021年2〜3月の円安、2002年9月の円安、2011年7〜8月の円高)。26年やって11日が最長というのも、コイン投げの計算とだいたい整合する数字なんですよ。
「n日続いた後」の継続率を出してみる
分布が一致したということは、たぶん継続率も50%前後になるはずです。実際に「すでにn日連続している状態から、翌営業日も同じ方向に行った割合」を数えました。
| すでに何日連続か | 該当した回数 | 翌日も継続 | 継続率 | ±標準誤差 |
|---|---|---|---|---|
| 1日 | 3,401 | 1,699 | 50.0% | ±0.9% |
| 2日 | 1,699 | 825 | 48.6% | ±1.2% |
| 3日 | 825 | 396 | 48.0% | ±1.7% |
| 4日 | 396 | 189 | 47.7% | ±2.5% |
| 5日 | 189 | 83 | 43.9% | ±3.6% |
| 6日 | 83 | 33 | 39.8% | ±5.4% |
| 7日 | 33 | 15 | 45.5% | ±8.7% |
1〜4日はきれいに50%前後です。「3日続いたから4日目は反転しやすい」みたいな話は、ここでは出てこないんですよね。48.0%って、ほぼコイン投げです。
面白いのは5日・6日で、継続率が43.9%・39.8%まで下がってます。「お、やっぱり伸びきったら戻るんじゃん」と言いたくなるところなんですけど、標準誤差を見てください。±3.6%と±5.4%あります。50%からのズレが1.7σ・1.9σくらいで、偶然でも普通に起きる範囲なんですよ。
注意
そもそも「コイン投げなら連続日数が伸びるほど反転しやすくなる」というのは間違いです。コインは前回の結果を覚えていないので、何回表が続いた後でも次が裏になる確率は50%のまま。これはギャンブラーの誤謬と呼ばれる有名な勘違いで、「そろそろ戻る」という感覚はだいたいこれなんですよね。だから「50%から下がっていること」そのものを探すのが正しい検証になります。
決定的な検証: 実際に逆張りしたら儲かったのか
継続率の話だけだと水掛け論になるので、実際の損益で測りました。「n日連続した日のニューヨーク正午に連と逆方向へエントリーして、翌営業日の正午に決済する」という単純なルールです。スプレッドと手数料は含めていません(つまり実際より有利に出ます)。
| 何日連続した後に入るか | 回数 | 年あたり | 勝率 | 平均損益 | ±標準誤差 | 有意性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1日 | 3,401 | 126.9回 | 49.1% | -1.08pips | ±1.23 | 0.88σ |
| 2日 | 1,698 | 63.4回 | 50.7% | +0.92pips | ±1.76 | 0.52σ |
| 3日 | 825 | 30.8回 | 51.0% | +0.22pips | ±2.41 | 0.09σ |
| 4日 | 396 | 14.8回 | 51.8% | -0.37pips | ±3.40 | 0.11σ |
| 5日 | 189 | 7.1回 | 55.6% | +4.63pips | ±4.72 | 0.98σ |
| 6日 | 83 | 3.1回 | 59.0% | +6.71pips | ±7.37 | 0.91σ |
| 7日 | 33 | 1.2回 | 54.5% | +6.91pips | ±12.13 | 0.57σ |
1〜4日連続後は平均±1pips以内。要するに何も起きていません。
5日・6日は+4.63pips・+6.71pipsとプラスで、勝率も55.6%・59.0%。ここだけ見ると「お?」となるんですけど、標準誤差が±4.72pips・±7.37pipsあって、どちらも1σに届いていません。統計的には「ゼロと区別がつかない」という判定になります。
しかも5日連続は26.8年で189回=年7.1回、6日連続は83回=年3.1回しか来ないんですよ。仮に+4.6pipsの優位が本物だったとしても、年間32pips。スプレッドを引いたら消えます。
他の通貨ペアでは符号すら揃わなかった
「ドル円だけの性質かもしれない」と思って、同じH.10統計からEUR/USD・GBP/USD・AUD/USD・NZD/USD・USD/CHF・USD/CADも同じ期間・同じ方法で集計しました。ここが一番わかりやすかったです。
| ペア | 3日連続後 | 4日連続後 | 5日連続後 | 6日連続後 |
|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | +0.22±2.41 | -0.37±3.40 | +4.63±4.72 | +6.71±7.37 |
| EUR/USD | -2.27±2.35 | -8.64±3.36 | +0.45±4.81 | +15.19±6.14 |
| GBP/USD | +3.23±3.00 | -5.43±4.34 | +3.93±5.97 | +2.67±9.08 |
| AUD/USD | -0.16±1.93 | -4.63±2.51 | +1.75±4.26 | -0.47±5.04 |
| NZD/USD | +3.45±1.76 | -1.64±2.59 | +2.10±4.03 | +1.33±5.48 |
| USD/CHF | -3.42±2.31 | +0.10±3.80 | -1.61±5.84 | +11.25±5.36 |
| USD/CAD | +0.30±2.06 | -5.68±3.39 | +4.71±4.45 | +1.91±5.86 |
4日連続後は7ペア中5ペアがマイナスです。逆張りが負けてるんですよ。6日連続後はEUR/USDが+15.19、USD/CHFが+11.25と大きく出てる一方で、AUD/USDは-0.47。同じ現象を別の市場で見ているのに、符号すら揃っていません。
これ、本物の性質だったら7ペアそろって同じ向きに出るはずなんですよね。出ないということは、ドル円の5日・6日のプラスもたまたまそっちに転んだだけと考えるのが素直だと思います。
じゃあ外したときはどうなるのか
ここからが実務的に大事なところです。優位性がゼロなのは分かったとして、逆張りして読みが外れたときに何pips逆行するのかを測りました。
「3日連続した時点で逆張りして、そのまま連が続いてしまった396回」について、そこからさらにどれだけ逆行したかがこちらです。
| 水準 | 追加の逆行幅 |
|---|---|
| 中央値 | 63.5pips |
| 75%点 | 122.0pips |
| 90%点 | 207.5pips |
| 95%点 | 287.3pips |
| 最悪 | 611.0pips |
注意
この数字は「下限値」です。H.10は1日1本・正午の値しかないので、日中にどこまで逆行したかは一切見えません。正午から正午までの差分を足しているだけなので、実際にポジションが抱える含み損の最大値は必ずこれより大きくなります。安全側に見積もるなら、この数字に余裕を足して考えてください。
つまり構図としては、期待値がゼロのシグナルに対して、片側だけ重いテールリスクを背負いにいっているわけです。勝ったときは数十pips、外したときは中央値でも60pips超、運が悪いと300pips、26年に1回は600pips。これはちょっと割に合わないと思うんですよね。
資金10万円だと、ロット次第で何が起きるか
上の数字を円に直しておきます。資金10万円で、「3日連続に逆張りして、外した」場合の含み損です。ドル円は1pips=0.01円なので、0.1ロット(1万通貨)なら1pips=100円ですね。
| ロット | 1pipsあたり | 中央値(63.5pips) | 95%点(287.3pips) | 最悪(611pips) | 資金比(最悪) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.01 | 10円 | 635円 | 2,873円 | 6,110円 | 6.1% |
| 0.05 | 50円 | 3,175円 | 14,363円 | 30,550円 | 30.6% |
| 0.1 | 100円 | 6,350円 | 28,725円 | 61,100円 | 61.1% |
| 0.3 | 300円 | 19,050円 | 86,175円 | 183,300円 | 183.3% |
| 0.5 | 500円 | 31,750円 | 143,625円 | 305,500円 | 305.5% |
| 1.0 | 1,000円 | 63,500円 | 287,250円 | 611,000円 | 611.0% |
資金10万円で0.3ロット以上を持つと、26年に1回クラスの展開で資金を超えます。海外FX業者の多くはゼロカットを採用しているので追証は発生しない設計になっていますが、それは「口座の資金が消える」のを止めてくれるわけではないんですよね。ゼロカットは最後の安全網であって、ロットの設計をサボっていい理由にはならないです。
この検証をやってみて私が変えたこと
正直に言うと、私もこの集計をやる前は「5日も続いたらさすがに」と思っていた側の人間です。実際にエントリーの判断材料として連続日数を見ていた時期もありました。
で、数字を出してみて何が一番こたえたかというと、1日で終わる連が1,702本、コイン投げの計算値が1,700.5本という一致なんですよ。自分が「相場の癖」だと思って見ていたものが、ほぼそのまま乱数の見た目だったわけで。
今は連続日数をエントリーの根拠には使わないことにしました。代わりに見るようにしたのが「外したときに何pips耐える前提なのか」のほうです。上の表でいう95%点、287pipsを基準に、そこを耐えても資金の何%で済むロットはいくつか、という順番で決める。方向を当てにいく代わりに、外れたときの大きさを先に決めておくという考え方ですね。
こっちに切り替えてから、少なくとも「なんでこのロットなんだっけ」と後から自分に説明できないエントリーは減りました。手応えとしては悪くないと感じています。
POINT
連続日数はエントリーの根拠にはならないけれど、「どれだけ逆行しうるか」の目安としては使えます。3日連続した局面で逆張りを考えるなら、95%点の287pipsを耐えられるロットかどうかを先に確認する。向きを当てる道具ではなく、幅を見積もる道具として使うのがいいと思うんですよね。
この検証で測れていないこと
フェアに書いておきます。今回の数字には限界があります。
- 日中の値動きは一切見えていません。H.10は正午の値が1日1本だけ。だから「日中に何回方向が変わったか」「ヒゲがどこまで伸びたか」は分かりません。日足の方向だけの話です
- 金曜→月曜を1営業日として扱っています。週末のギャップが日次の変化に溶け込んでいるので、週末だけを切り出した分析にはなっていません
- スプレッドとスワップを損益に含めていません。含めると逆張りの成績はさらに下がる方向なので、結論は変わりませんが、実際の取引ではここが効きます
- 検証したのは「日足の方向が何日続いたか」だけです。移動平均やRSIと組み合わせた逆張り手法まで否定するものではありません
今後の注目ポイント
H.10統計は毎週月曜日(米国の祝日がある週はずれます)にFRBが更新していて、誰でも無料で取れます。今回使ったのは2026年10月19日付のリリースでした。
同じ集計を自分の手で再現したい人は、FRBのサイトから各通貨の過去データを落として、前営業日比の符号を並べるだけでできます。プログラムを書かなくても、表計算ソフトで符号の列を作って連続数を数えれば同じ結論に辿り着けるはずです。自分でやると納得感がぜんぜん違うので、おすすめなんですよね。
あと、今回みたいに「そのルールが本当に効くのか」を過去データで確かめたいとき、検証用の口座を1つ別に持っておくと楽なんですよ。本番の資金とは完全に分けて、小さいロットで試す用の口座ですね。
私が検証用に使っているのはExnessです。理由は単純で、最低入金額のハードルが低くて、小さいロットでも動かしやすいから。検証って要するに「負けてもいい金額で何回も試す」作業なので、ここが軽いと心理的に続けやすいんですよね。スキャルピングやEAの制限が緩いのも、検証用途だと助かるポイントです。
ただ、口座タイプごとの条件やスプレッド・手数料は変わることがあるので、最新の情報は必ず公式サイトで確認してください。この記事の数値も「複数の情報源で確認した限りでは」という前提のものです。
まとめ
ドル円26年分・連3,401本を数えて分かったことを並べます。
- 連続日数の出方はコイン投げとほぼ一致。1日で終わる連は実測1,702本に対して計算値1,700.5本。長さ1〜5で実測/期待が0.97〜1.03倍
- 継続率は1〜4日連続後でほぼ50%。5日・6日で43.9%・39.8%まで下がるが、標準誤差±3.6%・±5.4%の範囲内
- 実際に逆張りしても平均+4.63pips(±4.72)。1σに届かず、年7.1回しか来ない。スプレッドを引けば消える
- 他6通貨ペアで符号すら揃わない。4日連続後は7ペア中5ペアがマイナス
- 外したときの逆行は中央値63.5pips・95%点287.3pips・最悪611pips(しかもこれは日中を見ていない下限値)
「そろそろ戻る」は、残念ながらデータでは支えられませんでした。連続日数は向きを当てる道具ではなく、外したときの幅を見積もる道具として使うほうが実用的だと思います。
こういうのって、自分の中の「なんとなくの感覚」を数字で確かめにいくと、半分くらいは崩れるんですよね。崩れたほうが結果的に得なことが多いので、気になっている言い伝えがあったら一度数えてみることをおすすめします。
データ出典: Federal Reserve Board, H.10 Foreign Exchange Rates (Historical Rates, Noon Buying Rates in New York) / 2026年10月19日付リリース。集計対象は2000年1月3日〜2026年10月16日の6,717営業日。
