今朝、来週(10/16〜10/23)の経済指標カレンダーを開いて、ちょっと固まったんですよね。
★3つ以上の指標が63行並んでいるのに、「予想」欄に数字が入っているのは3行だけだったんです。中国の第3四半期GDPも、英国のCPIも、米国のPMI速報値(★5)も、全部「—」。
一瞬「来週って誰も予想出してないの?」と思ったんですけど、よく考えたらそんなわけないんですよ。じゃあこれは何なのか。気になったので、2026年4月6日から10月23日までの29週分のカレンダーを全部落として、2,116件の発表済みデータを数えてみました。
結論から言うと、「予想が空欄」には2つのまったく違う意味が混ざっていて、そこを読み分けないとカレンダーの使い方を間違えます。
何をどう数えたか
データ源はみんかぶFXの経済指標カレンダー(fx.minkabu.jp/indicators)なんですけど、ここは1週間分の指標が表で並んでいて、列が「時間 / 国 / 指標名 / 重要度★ / 前回ドル円変動幅 / 前回(改定) / 予想 / 結果」になっているんですよね。
この29週分(2026-04-06〜2026-10-23)をcurlで取得して、自前のスクリプトで集計しました。母数はこんな感じです。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 取得した週 | 29週 |
| 行(指標の1系列)の合計 | 2,257行 |
| うち発表済み(10/15時点) | 2,153行 |
| うち「結果」が入っている行 | 2,116行 |
| ユニークな指標系列 | 367系列 |
ちなみに「前回ドル円変動幅」というのは、その指標の前回の発表から10分後にドル円が何pips動いたかという数字です。これはページ側に定義が注記されているので、そのまま使っています。後半でこれを使います。
発表済みで見ると、予想が空欄なのは27.1%
まず素直に、結果が出ている2,116行のうち予想欄が「—」だった行を数えました。
574行 / 2,116行 = 27.1%。だいたい4件に1件です。
「同じ時刻に出る複数の内訳を1イベントとして畳む」という数え方でもやってみたんですけど、338 / 1,273 = 26.6%でほぼ同じでした。数え方のクセで出た数字ではなさそうです。
で、これが重要度★とどう関係しているか。きれいに効きました。
| 重要度 | 行数 | 予想なし | 比率 |
|---|---|---|---|
| ★1 | 93 | 58 | 62.4% |
| ★2 | 787 | 315 | 40.0% |
| ★3 | 924 | 192 | 20.8% |
| ★4 | 251 | 9 | 3.6% |
| ★5 | 61 | 0 | 0.0% |
★5は61行すべてに予想が付いていました。★4でも96.4%。つまり「★4以上しか見ない」という人にとっては、予想の欠損はほぼ無縁の話なんですよね。
POINT
予想欄の欠損率は★1で62.4%、★5で0.0%。「予想が付かない」ことと「重要度が低い」ことはかなり重なっている。ただし★4でも9行は空欄だった。
でも冒頭の「63行中3行」は説明できない
ここで最初の疑問に戻るんですけど、発表済みの★4が96.4%埋まっているなら、来週の★3以上63行のうち60行が空欄なのはおかしいじゃないですか。
答えは単純で、予想は発表の直前になってから埋まるからです。
10/16以降のまだ発表されていない104行を見ると、予想が入っているのは7行だけ(6.7%)。しかもその7行は全部が翌日=10/16の分で、10/17以降は1行も入っていませんでした。
| 日付 | 行数 | 予想あり |
|---|---|---|
| 10/16 | 19 | 7 |
| 10/17 | 1 | 0 |
| 10/19 | 14 | 0 |
| 10/20 | 18 | 0 |
| 10/21 | 20 | 0 |
| 10/22 | 12 | 0 |
| 10/23 | 20 | 0 |
見事に「翌日分だけ埋まっている」という形です。市場予想って通信社が事前調査をまとめて出すものなので、数日前〜前日くらいにならないと確定しないんですよね。カレンダー側はそれを受けて埋めているだけ、と。
注意
週末に翌週のカレンダーを眺めて「この指標は予想が無いから無視でいいか」と判断するのは、ほぼ確実に間違いです。来週の★4・★5はこれから埋まります。「今の時点で空欄かどうか」は「予想が公表されるかどうか」とまったく別の話なんですよ。
特に自動売買やbotでカレンダーをパースしている人は、ここは気をつけたほうがいいと思います。取得タイミングによって同じ指標が「予想あり」にも「予想なし」にも見えるので、欠損のハンドリングを決めておかないと挙動が日によって変わります。
国によってもかなり違う
発表済みのデータを国別に見ると、これもばらつきが大きかったです。
| 国 | 行数 | 予想なしの比率 |
|---|---|---|
| NZ | 46 | 54.3% |
| 豪(AU) | 107 | 44.9% |
| 南ア(ZA) | 65 | 41.5% |
| 日本(JP) | 357 | 40.1% |
| 中国(CN) | 104 | 28.8% |
| カナダ(CA) | 116 | 25.9% |
| 英国(GB) | 258 | 25.2% |
| ユーロ圏(EU) | 185 | 23.8% |
| 米国(US) | 667 | 18.9% |
| ドイツ(DE) | 211 | 17.1% |
米国とドイツは2割弱、NZと豪は4〜5割。これは素直に「どの国の指標に事前調査のコストをかけているか」の差だと思うんですけど、日本が40.1%と高めなのはちょっと意外だったんですよね。理由を見てみたら、これは日本の指標がやたら細かい内訳まで行として並ぶからで、メジャーな系列(CPI・日銀関連)にはちゃんと予想が付いています。
一番の発見: 「予想が付く指標」は固定されていない
ここが個人的に一番面白かったところなんですけど。
最初は「予想が付く指標と付かない指標がきっぱり分かれているんだろうな」と思っていたんですよ。ところが、3回以上登場した287系列を分類したらこうなりました。
| 分類 | 系列数 | 割合 |
|---|---|---|
| 毎回かならず予想あり | 159 | 55.4% |
| 毎回かならず予想なし | 37 | 12.9% |
| 回によって変わる(混在) | 91 | 31.7% |
3分の1近い系列が「回によって予想が付いたり付かなかったり」なんですよね。行数でいうと混在系列が1,958行中674行(34.4%)を占めています。
極端な例だと、米国の週間石油在庫統計は27回中17回(63%)が予想なし。毎週同じ時刻に出る同じ指標なのに、6割以上の週で予想欄が空いているんです。英国の雇用統計の失業率や、中国の小売売上高・鉱工業生産の年初来ベースも似たパターンでした。
逆に「毎回かならず予想なし」の37系列のうち、★3以上のものが11系列ありました。カナダのIvey購買部協会指数、中国の貿易収支、米国の対米証券投資、NZの貿易収支、英国の失業保険申請件数、ユーロ圏のZEW景況感指数あたりです。この11系列は、サプライズを計算しようとしても構造的に計算できません。
じゃあ「予想なし」の指標は動かないのか
ここが実務的に一番知りたいところですよね。予想が付かない=市場が注目していない=動かない、なら無視していいわけですから。
前回ドル円変動幅の絶対値で比べてみました。
| 区分 | 件数 | 中央値 | P90 |
|---|---|---|---|
| 予想あり(全体) | 1,501 | 3.5pips | 11.6pips |
| 予想なし(全体) | 562 | 2.2pips | 8.9pips |
| 予想あり(★4のみ) | 233 | 4.4pips | 14.3pips |
| 予想なし(★4のみ) | 9 | 4.1pips | 10.6pips |
全体で見ると「予想なし」のほうが小さい(2.2 vs 3.5pips)んですけど、★4だけで比べると4.1 vs 4.4でほぼ差がありません。つまり全体の差は「予想なしには★1・★2が多い」ことが作っていただけで、予想の有無そのものが効いているわけじゃないんですよね。
もう一歩踏み込んで、さっきの「混在系列」の中で、同じ指標の予想あり回と予想なし回を比べてみました。これなら指標の性質は揃うので、純粋に予想の有無だけを見られます。比較できたのは36系列。
- 予想なしの回のほうが変動幅の中央値が小さかった系列: 18 / 36 = 50.0%
- 系列ごとの差(なし − あり)の中央値: −0.03pips
きれいにコインの裏表です。同じ指標で見る限り、「今回は予想が出ていない」ことから値動きの大きさを読み取ることはできません。
正直これは自分の直感と逆だったので、集計し直して3回確認しました。でも何回やっても五分五分なんですよね。「予想が無い回は市場の注目が薄いから静か」というストーリーは、少なくともこのデータでは裏付けられませんでした。
で、実際どう使えばいいのか
ここまでを踏まえて、私が自分の運用に落とし込むならこうかな、というのを書いておきます。
1. 「空欄だから無視」は、来週のカレンダーに対しては絶対にやらない。前日にならないと埋まらないので、週末の時点では判断材料になりません。見るなら★のほうです。
2. サプライズ(結果−予想)を前提にしたルールは、★4以上に限れば成立する。★4で96.4%、★5で100%埋まっているので、「予想が無くてルールが動かない」という事故はほぼ起きません。★3以下まで下ろすと2〜4割で計算不能になります。
3. 予想が無い指標でもポジションは守る。これが今回の集計で一番言いたいところで、予想の有無は値動きの大きさと関係していませんでした。「予想が出てないから静かだろう」と思って指標時刻をまたいだら、普通に動いて驚く、というのは起こりうる話なんですよね。
指標をまたぐなら、取引条件のほうも見ておきたい
ついでに触れておくと、指標発表の前後ってスプレッドが平常時より広がりやすい時間帯なんですよね。これは特定の業者がどうこうという話じゃないんですけど、インターバンク側の流動性が薄くなるので構造的にそうなります。
今回のデータで言うと、★4の指標は発表10分後の変動幅の中央値が4.4pips、上位10%で14.3pipsでした。ここに平常時+数pipsのスプレッド拡大が乗ると、値動きに対するコストの比率は普段とまったく変わってきます。短期で回す人ほど、ここは口座選びの段階で意識しておく価値があると思います。
見るべきポイントは3つかなと思うんですけど、①指標時のスプレッドがどこまで広がるか、②約定拒否(リクオート)が発生するか、③指標時の取引制限があるか。特に③は業者ごとにルールが違うので、スキャルピング寄りの使い方をするなら事前に規約を確認しておいたほうがいいです。「指標トレード禁止」が規約に書かれている業者も存在するので、ここは必ず自分の目で読んでください。
Exnessは低スプレッド帯の口座タイプを用意していて、スキャルピングや短期売買を想定した層からの言及が多い業者です。私としては、指標をまたぐ前提で口座を選ぶなら、こういう「約定とコスト側のスペックが開示されている業者」から比較していくのが現実的だと思っています。ただし条件は改定されることがあるので、最新の数値は必ず公式サイトで確認してください。
来週(10/16〜10/23)の★4以上
最後に、今回のデータに入っていた来週の★4以上を並べておきます。カッコ内が10/15時点の予想欄の状態なので、「これがこれから埋まっていく」という目で見てもらえると、今回の話が実感できると思います。
| 日時(日本時間) | 指標 | 10/15時点 |
|---|---|---|
| 10/16 22:15 | 米・鉱工業生産指数 09月(★4) | 予想あり |
| 10/19 11:00 | 中・実質GDP 第3四半期(★4) | 空欄 |
| 10/20 15:00 | 英・ILO失業率 08月(★4) | 空欄 |
| 10/20 18:00 | 独・ZEW景況感指数 10月(★4) | 空欄 |
| 10/20 23:00 | 米・中古住宅販売成約指数 09月(★4) | 空欄 |
| 10/21 15:00 | 英・消費者物価指数 09月 前年比(★4) | 空欄 |
| 10/23 22:45 | 米・製造業PMI 速報値 10月(★5) | 空欄 |
| 10/23 22:45 | 米・非製造業PMI 速報値 10月(★4) | 空欄 |
英国のILO失業率は、今回「★4なのに予想が空欄だった9行」のうち2行を占めていた系列でもあります。6回中2回で予想が付いていなかったので、10/20の分も当日まで埋まらない可能性はあります。そのときは「注目されていないから」ではなく「事前調査が揃っていないだけ」と読むのが正しい、というのが今回の結論です。
POINT
「予想が空欄」には(1)まだ埋まっていないだけ、(2)この指標には元々予想が付かない、の2通りある。見分け方は簡単で、発表日まで日があるなら前者、前日になっても空欄なら後者の可能性が高い。
数え方の限界について
正直に書いておくと、今回の集計にはいくつか限界があります。
まず、これは1つのカレンダー媒体の掲載状況を数えたものです。「市場予想が世の中に存在しない」ことと「この媒体に載っていない」ことはイコールではありません。別の媒体なら数字が入っている指標もあるはずです。
それから、変動幅の列はドル円の動きだけです。NZの指標ならNZドル絡みのペアのほうが素直に反応するはずなので、「NZの指標はドル円をあまり動かさない」という結論にはなっても「動かない指標だ」とは言えません。
あと細かいところですが、発表日を過ぎても結果が入っていない行が37行(1.7%)ありました。うち18行が米国です。カレンダーを機械的に読む場合、予想だけでなく結果側の欠損も想定しておく必要があります。
29週・2,116件という母数も、1年に満たない期間です。季節性までは見られていません。そのあたりは割り引いて読んでもらえればと思います。
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まとめ
- 発表済み2,116行のうち、予想欄が空欄なのは574行=27.1%。4件に1件
- 欠損率は重要度で決まる。★1で62.4%、★4で3.6%、★5で0.0%
- ただし来週のカレンダーは別物。未発表104行のうち予想が入っているのは7行(6.7%)で、全部翌日分。予想は前日前後に埋まる
- 「予想が付く指標」は固定されていない。3回以上出た287系列のうち31.7%が混在(米週間石油在庫は27回中17回が空欄)
- 予想の有無から値動きの大きさは読めない。同じ指標の中で比べると18/36=50.0%の五分五分、差の中央値は−0.03pips
「予想が無い=どうでもいい指標」だと思っていたんですけど、数えてみたらその読み方はかなり雑でした。空欄には2種類あって、来週のカレンダーで見る空欄はほとんどが「まだ埋まってない」ほうなんですよね。
カレンダーを機械的に処理している人ほど、一度自分の手元のデータで欠損率を数えてみると発見があると思います。私もやってみるまで、まさか3分の1の系列が回によって変わるとは思っていませんでした。
