経済指標が多いのは月初ではなく月末だった|22か月・584日を数えたら、効いていたのは日付ではなく「第N営業日」

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「月初は雇用統計があるから荒れる」って、よく言われますよね。私もなんとなくそう思ってました。

でも、ちゃんと数えたことってなかったんですよ。月のどのあたりに重要指標が固まってるのか、感覚じゃなくて本数で見たらどうなるんだろう、と。

というわけで、経済指標カレンダーを22か月ぶん・584日集めて、1日から31日までの日付で割って数えてみました。結果は、正直ちょっと意外だったんですよね。

数えかた

使ったのはみんかぶFXの経済指標カレンダーです。週ごとのページを2024年12月30日から2026年10月31日まで96週ぶん取得しました。全部200で返ってきていて、取りこぼしはゼロです。

拾った指標は全部で7,404件。そのうち重要度★4以上が1,074件で、今回はこれを「重要指標」として数えています。

ただ、日付でそのまま割るとズルいんですよね。というのも、曜日によって指標の本数がまったく違うからなんですよ。実測するとこうでした。

曜日 ★4以上の本数/日
月 0.57本
火 2.34本
水 3.08本
木 3.06本
金 1.98本
土 0.15本

水曜と木曜が月曜の5倍以上あるんですよ。なので「◯日は指標が多い」と言っても、その日がたまたま水曜に当たりやすかっただけかもしれない。

そこで、各日付の曜日構成から「この日なら本来これくらい」という期待値を出して、実測÷期待値(以下obs/exp)で見ることにしました。1.00なら曜日どおり、1.00より大きければ曜日では説明できない上振れです。

結論:重いのは月末。月初じゃない

月内を3つに割った結果がこれです。

期間 ★4以上/日 obs/exp
月初(1〜10日) 1.46本 0.79
月中(11〜20日) 1.86本 1.00
月末(21〜31日) 2.19本 1.19

本数で見ると、一番混んでいるのは月末でした。月初の1.5倍くらいあるんですよね。しかも曜日で補正したあとでもこの差が残っているので、曜日のせいではないということになります。

「月初が荒れる」という感覚とは逆なんですよ。ここが今回いちばん面白かったところです。

月末の週に印がついたデスクカレンダーと、チャートやデータを表示した2画面のトレードデスク

でも「★5だけ」で数えると、ひっくり返る

と思ったんですけど、念のため最重要の★5だけに絞って数え直したら、結果が逆転したんですよね。

期間 ★5の本数
月初(1〜10日) 97本
月中(11〜20日) 70本
月末(21〜31日) 53本

★5は月初がいちばん多いんですよ。要するにこういうことだと思います。

POINT

月末は「★4クラスの指標が数で押し寄せる」時期。月初は「本数は少ないが★5の大物が集中する」時期。どちらが荒れるかは、本数で測るか一撃の重さで測るかで答えが変わります。「月初が荒れる」という感覚も、間違いではなかったわけですね。

月初は「日付」じゃなくて「第N営業日」で決まっている

もうひとつ気づいたことがあります。月初を日付で見ると薄いのに、感覚としては混んでいる。なんでだろうと思って、月初から数えて第何営業日かで割り直してみたんですよ。そしたらはっきりしました。

第N営業日 ★4以上/日
第1営業日 2.55本
第2営業日 2.05本
第3営業日 2.09本
第4営業日 1.32本
第5営業日 1.41本
第6営業日 0.91本
第7営業日 1.23本
第8営業日 2.68本

平日全体の平均が2.21本なので、濃いのは第1〜3営業日と、第8営業日なんですよね。あいだの第4〜7営業日はがくっと落ちます。

つまり月初が混むのは「1日から10日まで」じゃなくて、月が明けて最初の3営業日に集中しているだけなんですよ。日付で見ると、その濃い部分が薄い部分に薄められて消えてしまう。これが「月初1〜10日は0.79」のカラクリでした。

第8営業日の山は、米国の消費者物価指数(CPI)が効いています。CPIは第8営業日に出たのが実測で最多(40件)でした。

月末は「最終営業日から逆算」で決まっている

月末も同じ要領で、最終営業日から逆算して数えてみました。

月末から ★4以上/日
最終営業日 3.04本
1営業日前 3.57本
2営業日前 3.23本
3営業日前 2.14本
4営業日前 2.32本
5営業日前 3.50本

平均2.21本に対して、月末ラスト3営業日は3.0〜3.6本。1.5倍くらいなんですよね。月のどこよりも濃い区間がここでした。

日付ベースで見たときにいちばん高かったのも30日(obs/exp 2.28)で、これと整合します。ちなみにいちばん静かだったのは22日(obs/exp 0.34)で、次が9日(0.44)、7日(0.55)でした。

なぜそうなるのか:指標ごとに「定位置」がある

ここまでの偏りは、気まぐれじゃなくて指標ごとに発表の定位置が決まっているからなんですよね。22か月分の実測で、特に位置が固まっていたものを並べます。

指標 件数 出た日付の範囲 平均
ユーロ圏・実質GDP(速報値) 16 30日のみ 30.0日
米・ISM製造業景気指数 22 1〜6日 2.2日
米・ISM非製造業景気指数 22 3〜8日 4.9日
米・雇用統計 43 1〜20日 6.8日
米・消費者物価指数(CPI) 82 10〜24日 12.9日
英・実質GDP 14 12〜15日 13.4日
独・Ifo景況感指数 22 17〜27日 24.3日
米・PCE価格指数 44 6〜31日 25.1日
豪・消費者物価指数 87 7〜30日 26.6日

個人的に一番びっくりしたのがユーロ圏の実質GDP速報値です。22か月で16件、全部が30日ちょうどでした。1日もブレてないんですよ。こんなにきれいに固定されている指標があるとは思ってませんでした。

米ISM製造業が平均2.2日、CPIが平均12.9日、PCEとオーストラリアCPIが月末。この定位置が積み上がった結果が、さっきの山と谷なんですよ。

通貨ごとに「混む時期」が違う

もうひとつ、国別に分けたら通貨ペアごとの濃淡が見えてきました。★4以上の本数の内訳です。

国・地域 月初 月中 月末 合計
米国 241 244 280 765
オーストラリア 11 6 84 101
英国 6 53 13 72
ドイツ 0 20 24 44
ユーロ圏 4 5 22 31
日本 13 9 7 29

米国はわりと均等なんですけど、他がけっこう極端なんですよ。

オーストラリアは101本中84本が月末に寄っています。豪ドル絡みをやる人は、月末だけ注意レベルを上げればだいたい足りる計算になりますね。逆に英国は72本中53本が月中。そしてドイツは月初(1〜10日)の★4以上がゼロでした。22か月で1本もないんですよ。

注意

ここに出した数字はすべて2024年12月30日〜2026年10月31日の集計で、重要度の★はみんかぶFXの付与基準によるものです。媒体が違えば★の付き方も変わります。また、指標の本数が多いことと実際に相場が動くことは別の話で、本数の多い日が必ず荒れるわけではありません。発表予定は変更されることもあるので、実際の日時は各自でカレンダーを確認してください。

じゃあ、これをどう使うか

数えてみて、自分の見方が少し変わったところが3つありました。

  1. カレンダーは「日付」より「営業日」で見る。「来月の3日」じゃなくて「来月の第1営業日」で覚えておくほうが、ISMみたいな指標は当てやすいんですよね
  2. 月末ラスト3営業日は、本数が平均の1.5倍。ポジションを持ち越すなら、ここだけは事前にカレンダーを見ておく価値があると思います
  3. 自分が触る通貨ペアの「混む時期」だけ覚える。全部の指標を追うのは現実的じゃないので、豪ドルなら月末、ポンドなら月中、くらいの粗い地図でも十分役に立つ気がします

逆に言うと、月の7〜9日あたりと22日は、1か月の中では静かな部類でした。もちろん要人発言や地政学リスクは日付と関係なく飛んでくるので、「指標が少ない日=安全な日」ではないんですけど。

今回の集計スクリプトはセルフテスト付きでリポジトリに置いてあります。元データは誰でも取れるものなので、気になる人は自分の期間で数え直してみると面白いと思いますよ。

ちなみに、指標発表の前後はスプレッドが広がりやすい時間帯でもあります。月末の混む区間を狙って短期で入るなら、約定条件まわりは事前に見ておいたほうがいいと思うんですよね。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

初心者の方へ。覚えておくといいのは2つです。月末のラスト3営業日は指標が平均の1.5倍くらい詰まっていること。そして月初は本数こそ少ないけれど★5の大物が集まること。「月末は数で、月初は重さで荒れやすい」と押さえておけば、カレンダーを開く前の心構えとしては十分だと思います。

中上級者の方へ。使えるのは第N営業日の視点だと思うんですよね。第1〜3営業日と第8営業日が濃くて、第4〜7営業日は谷。この形は日付で集計すると完全に消えてしまいます。それと国別の偏り(豪は月末84/101、英は月中53/72、独は月初ゼロ)は、扱う通貨ペアによってはそのままリスク管理のカレンダーに落とせるはずです。

「なんとなく月初が荒れる」で止めずに数えてみたら、月末のほうが本数は多くて、でも★5は月初に寄っていて、しかも効いているのは日付じゃなくて営業日だった。思い込みを数えると、だいたい何か出てくるんですよね。