こんにちは、瀬名ハルカです。
今週の日本は9月21日(月)から23日(水)までお休みで、土日を含めると5連休のシルバーウィークなんですよね。私も完全にお出かけモードだったんですけど、先週末に「日銀がレートチェックを実施した」という報道が流れたのを見て、ちょっと手が止まりました。
というのも、過去の円買い介入って日本の祝日にけっこう刺さっているイメージがあったんですよ。でも「イメージ」で書くのは私のポリシーに反するので、財務省が公開している介入実績の生データを落としてきて、1日ずつ数え直してみました。
わりと驚く数字が出てきたので、そこを中心にまとめます。先に断っておくと、この記事は「次に介入が来る」と予想する記事ではありません。過去に公表された実績を数えるのと、これから何が起きるかを当てるのは、まったく別の話なので。
まず、先週末に何があったのか
事実関係だけ簡単に整理しますね。
- 9月16日にFOMC、9月18日に日銀金融政策決定会合。日銀は政策金利を1.25%へ引き上げ、植田総裁は会見で追加利上げに含みを持たせた
- ところが、ドル円は下がるどころか18日の欧州市場序盤に158.05円まで上昇
- その局面で「日銀がレートチェックを実施した」と報じられ、156.60円付近まで下押し(外為どっとコム/DZHフィナンシャルリサーチの市場概況より)
- 9月21日〜23日は日本が祝日で、東京市場は休場
レートチェックって何かというと、日銀が金融機関に「今いくらで取引できる?」と実勢レートを問い合わせる行為なんですけど、実弾の売買は伴わないんですよ。ただ、市場からは「当局が本気で見てるぞ」というサインとして受け取られます。
POINT
レートチェックは「問い合わせ」であって介入そのものではありません。それでも今回は報道をきっかけに約145pips(1円45銭)動いています。実弾が出ていない段階でこれ、というのは頭に入れておきたいところなんですよね。
財務省の生データを10回分、数え直してみた
ここからが本題です。為替介入の実績って、実は財務省がちゃんと公開してるんですよ。しかも平成3年(1991年)4月から現在までの全データがCSVで1本にまとまって置いてあります。「外国為替平衡操作の実施状況」というページですね。
これを落としてきて2022年以降のドル売り・円買い介入だけを抜き出すと、ちょうど10日分ありました。曜日と、内閣府が公開している祝日CSVを突き合わせた結果がこちらです。
| 実施日 | 曜日 | 金額 | 日本のカレンダー上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 2022/9/22 | 木 | 2兆8,382億円 | 翌日が秋分の日(3連休の直前) |
| 2022/10/21 | 金 | 5兆6,202億円 | 通常の平日 |
| 2022/10/24 | 月 | 7,296億円 | 通常の平日 |
| 2024/4/29 | 月 | 5兆9,185億円 | 昭和の日(祝日) |
| 2024/5/1 | 水 | 3兆8,700億円 | GWの谷間の平日 |
| 2024/7/11 | 木 | 3兆1,678億円 | 通常の平日 |
| 2024/7/12 | 金 | 2兆3,670億円 | 通常の平日 |
| 2026/4/30 | 木 | 6兆2,787億円 | GWの谷間の平日 |
| 2026/5/4 | 月 | 7,802億円 | みどりの日(祝日) |
| 2026/5/6 | 水 | 4兆6,759億円 | 休日(振替休日) |
合計すると36兆2,461億円。ここから自分で計算した数字が2つあります。
ひとつ目。10回のうち3回は、日本の祝日そのものに実行されています。2024年の昭和の日、2026年のみどりの日、同じく2026年5月6日。この3日だけで11兆3,746億円、全体の約31%です。
ふたつ目。ゴールデンウィーク期間(4/29〜5/6)の実行が5回あり、金額ベースでは全体の59.4%を占めています。半分以上がGWに集中してるんですよ。正直、数えるまでそこまで偏ってるとは思っていませんでした。
ついでに言うと、2022年の1回目(9/22)も秋分の日を挟む3連休の直前営業日でした。この年のカレンダーも、今年とほぼ同じシルバーウィークの並びだったんですよね。
なぜ祝日に偏るのか(と、偏って見えるだけかもしれない話)
理由として一般に言われているのはシンプルで、日本が祝日でも為替市場そのものは開いているからなんですよ。ここ、意外と誤解されがちなポイントだと思います。
休んでいるのは東京の銀行や証券会社であって、FXは世界中の金融機関が24時間つないでいる相対取引なので、日本が祝日でもロンドンもニューヨークも普通に動いています。つまり祝日の日本時間帯は、市場は開いているのに国内勢だけがいないという、かなり特殊な状態なんですよね。参加者が少なければ板(注文の厚み)も薄くなるので、同じ金額の注文でも値が飛びやすくなります。
注意
ただ、この集計には限界があります。財務省は総額は毎月、実施日ごとの内訳は四半期ごとにしか公表しないんですよ。日次データが出ているのは2026年6月期まで。つまり2026年7月30日〜8月26日に公表されている15兆3,993億円がいつ実行されたのかは、まだ分からないんです。例年のペースだと内訳が出るのは11月上旬ごろ。ここが判明すると上の比率は変わる可能性があります。
要するに、「祝日だから介入が来る」という因果関係を証明できるデータではないということですね。サンプルは10回しかないし、未公表分もある。私としては「過去に公表されている分だけを数えるとこうなっている」以上のことは言えないと思っています。
ちなみに、もう少し長いスパンで見ると面白い事実もあって。1991年4月以降でドル売り・円買い介入が行われた日は全部で42日しかないんですけど、そのうち10日、つまり約24%が2022年以降の4年間に集中しているんですよ。35年分のうちの4年で4分の1です。
「1回の介入」がどれくらいの規模なのか、ロットに換算してみた
ここからは取引条件側の話です。兆円単位で言われてもピンと来ないので、自分の取引ロットと同じ単位に揃えてみました。FXの1ロットは10万通貨。仮に1ドル=155円で換算すると、こうなります。
| 対象 | 金額 | ロット換算 |
|---|---|---|
| 2026/4/30(過去最大の円買い介入) | 6兆2,787億円 | 約40万5,000ロット |
| 2026/5/6 | 4兆6,759億円 | 約30万1,000ロット |
| 2026/5/4(最小) | 7,802億円 | 約5万ロット |
| 2026年8月期の月次総額 | 15兆3,993億円 | 約99万3,000ロット |
1ロットで取引している個人の横で、数十万ロット単位の成行が短時間で流れるということなんですよね。しかも上で見たとおり、それが板の薄い時間帯に来ることがある。
この規模感が分かると、急変時に「逆指値を置いていたのに想定より不利な価格で約定した」というのは、業者が悪いというより市場構造の問題だというのが見えてきます。逆指値は「その価格になったら成行を出す」注文なので、そもそも約定価格を保証する仕組みじゃないんですよ。
じゃあ口座側で何を確認しておけばいいのか
予想はしない、でも備えはできる。ということで、「どれくらい動くと自分の口座がどうなるか」を先に数字にしておくのが一番おすすめです。
先週のレートチェック報道での値動きが約145pips(1円45銭)でした。これを基準に、1ドル=155円・レバレッジ1000倍・USD/JPYで計算してみます。1ロット(10万通貨)の必要証拠金は15,500円ですね。
| 逆行幅 | 1ロットの評価損 | 0.1ロットの評価損 | 必要証拠金の何倍か |
|---|---|---|---|
| 0.5円(50pips) | 5万円 | 5,000円 | 約3.2倍 |
| 1円(100pips) | 10万円 | 1万円 | 約6.5倍 |
| 1.5円(150pips) | 15万円 | 1万5,000円 | 約9.7倍 |
| 2円(200pips) | 20万円 | 2万円 | 約12.9倍 |
| 3円(300pips) | 30万円 | 3万円 | 約19.4倍 |
| 5円(500pips) | 50万円 | 5万円 | 約32.3倍 |
見てのとおりなんですけど、先週レベルの値動き(約1.5円)ですら、1ロットなら必要証拠金の約10倍の評価損になります。レバレッジ1000倍というのは「証拠金が少なくて済む」という意味であって、値動きに対する耐久力が上がるわけではまったくないんですよね。ここは何度でも書きたいところです。
POINT
私が自分で決めているのは3つ。① 連休や祝日をまたぐならロットを平時より落とす。② 証拠金維持率は「何%あるか」ではなく「何円動いたら危ないか」で見る。③ 使っている業者のロスカット水準・急変時のレバレッジ制限条項を、落ち着いているうちに約款で読んでおく。これだけでも当日バタバタしなくて済むようになりました。
③はけっこう大事で、業者によっては主要指標の前後や週末前にレバレッジ上限を引き下げる条項が約款に書かれていることがあるんですよ。読んでおかないと、いざという時に「思っていた必要証拠金と違う」ということが起きます。ロスカット水準そのものも各社バラバラなので、短期でロットを張る人ほどここの差は効いてきます。
今後の注目ポイント
直近のスケジュールで、取引時間との絡みで押さえておきたいのはこのあたりです。
- 9月24日(木): 東京市場が4日ぶりに再開。同日はスイス国立銀行(SNB)の金融政策発表、豪雇用統計、米中首脳会談も予定されています
- 9月25日(金): 中国が祝日で休場。ベイリーBOE総裁の発言予定あり
- 9月30日(水): 四半期末かつ日本企業の中間期末。月末フローが集中しやすい日です
- 10月上旬: 財務省から次の月次の平衡操作額が公表される見込み(金額のみ)
- 11月上旬ごろ: 7〜9月期の日次ベースの内訳が公表される見込み。ここで8月分の実施日が初めて分かります
今週の米国の経済指標は23日のPMI速報値くらいで、正直スカスカなんですよ。だからこそ指標以外の材料(要人発言・首脳会談・当局の姿勢)で動きやすい週という見方もできます。指標カレンダーが空いている週こそ油断しない、というのは個人的に何度か痛い目を見て覚えたことなんですよね。
注意
値動きの方向について、本記事では一切の見通しを示していません。複数の情報源で確認した限りでは市場の見方も割れています。また、各社のスプレッド・ロスカット水準・急変時の取扱いは変更されることがあるので、最新の条件は必ず各業者の公式サイトと約款でご確認ください。
今回使ったデータの出どころ
- 介入の実施日・金額: 財務省「外国為替平衡操作の実施状況」(日次ベースのCSV、1991年4月〜2026年6月期)および月次ベースの各公表ページ
- 祝日の判定: 内閣府が公開している国民の祝日CSV
- 先週の値動き・レートチェック報道: 外為どっとコム マネ育チャンネル(DZHフィナンシャルリサーチ提供)、ザイFX!の週間スケジュール
- ロット換算・証拠金倍率の表: 上記の金額をもとに私が計算したもの(換算レートは便宜上155円で統一)
ロット換算のレートは、実際の介入時の約定レートが公表されていないので、あくまで規模感をつかむための概算です。そこだけご承知おきください。
なお、海外FX業者は国内業者と比べてレバレッジもロスカット水準も設計が違うので、同じ値動きでも口座の挙動がかなり変わります。複数社に口座を持って条件を比べておくのは、こういう局面では素直に効くと個人的には思っています。
FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。
まとめ
- 9月18日に「日銀がレートチェックを実施」との報道があり、ドル円は158.05円から156.60円付近まで、約145pips下押しした
- 財務省の日次データで2022年以降の円買い介入10回を数え直すと、3回は日本の祝日当日、金額の59.4%はGW期間に集中していた
- ただし2026年8月期の15兆3,993億円は実施日が未公表で、11月上旬ごろに判明する見込み。集計はあくまで暫定
- 1回の介入は最大で約40万ロット相当。板が薄い時間帯にこれが流れる前提で、逆指値は約定価格を保証しないものと考えておいた方がいい
- レバレッジ1000倍・1ロットなら、1.5円の逆行で必要証拠金の約10倍の評価損
「祝日に介入が来る」と言いたいわけではまったくなくて、過去に公表されている実績を素直に数えると祝日がらみが多かった、という事実があるだけなんですよね。そこから先どうするかは、予想ではなくロットと証拠金の設計の話だと思っています。
明日24日から東京市場が戻ってきます。連休明けの最初の数時間は流動性がまだ整っていないことも多いので、私はいつもより少し様子を見てから入るつもりです。それでは、よい取引を。
