海外FX口座は何個まで分けていい?「役割分担」の前に資金の下限を計算する

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「海外FXは複数口座を使い分けよう」っていう記事、山ほどあるんですよね。ボーナス用の口座、低スプレッド用の口座、長期保有用の口座……みたいに役割を並べて、「用途で分けると便利です」で終わる。

でも私、あれを読むたびに引っかかってたんですよ。役割の例は書いてあるのに、「じゃあいくつまで分けていいのか」を書いてる記事が一つも無い。

口座を分けるのってタダじゃないんですよね。分けた瞬間に、1口座あたりの資金が減ります。で、以前ロット計算の記事で書いたとおり、海外FXには最小ロット0.01という床があるんですよ。資金が減るとこの床にぶつかって、そもそも自分で決めたリスク率でロットを刻めなくなる。

というわけで、今回はそこを計算してみました。結論を先に言っちゃうと、「口座を3つに分ける」は、だいたい「資金を3倍用意する」と同じ意味です。少なくとも、リスク率でロットを逆算するタイプの口座に関しては。

そもそも「分ける理由」は3つしかない

役割分担の話に入る前に、判定軸を1本立てておきたいんですよ。というのも、世の中で挙げられてる「複数口座のメリット」って、よく見ると分ける理由になってないものが混ざってるんですよね。

私の整理だと、口座を分ける正当な理由は次の3つだけです。

  1. 同じ口座では両立しない設定があるとき
  2. 同じ口座だと成績が混ざって見えなくなるとき
  3. 事故を伝播させたくないとき

①がいちばん分かりやすいと思います。たとえばXMだと、KIWAMI極口座はスプレッドが狭い代わりに入金ボーナスの対象外なんですよ(この損益分岐は別の記事で計算しました)。ボーナスで証拠金を厚くする戦い方と、スプレッドを削って回転させる戦い方は、同じ口座では物理的に両立しないんですよね。だから分ける。XS.comだとセント口座とVIP口座がMT5専用なので、MT4のEAを動かしたいなら口座を分けるしかない。これも①です。

②は検証の話。同じ口座でスキャルピングと長期保有を混ぜると、月末に残高を見ても「結局どっちが効いてたのか」が分からなくなるんですよ。手法ごとに口座を分けておくと、それがそのまま成績表になります。

③は後でちゃんと計算します。

で、逆に「分ける理由にならない」やつ。「業者を増やすと情報が増える」ってよく書いてあるんですけど、各社のマーケット情報って別に口座を持たなくても読めるんですよね。「リスク分散になる」も正直かなり微妙で、これは後述のとおり期待値としては何も減ってないです。あとは単純に、同じ役割の口座を2つ持つのは意味がないです。

分けるのに必要な資金の下限を計算してみた

ここが本題です。

さっきのロット計算の記事で、ロットは「許容損失額 ÷(損切りpips × 1pipsの価値)」で決まる、と書きました。ただ問題があって、出てきた数字をそのまま発注できないんですよ。ロットは0.01刻みでしか置けないので、切り捨てるしかない。

で、資金が小さいと、この切り捨ての影響が馬鹿にならなくなるんですよね。たとえば理論値が0.015ロットだったとして、0.01に落とすとリスクは狙いの3分の2、0.02に上げると3分の4になる。1%を狙ってるつもりが0.67%か1.33%にしかならないわけです。「1%」というリスク率が、そもそも表現できてない状態なんですよね。

そこで私は基準を1本置きました。ロット1刻み分の損失が、許容損失額の10分の1以下に収まっていること。これなら1.0%・1.1%・1.2%……くらいの粒度で刻めます。

円建てのペアで0.01ロット(=1,000通貨)を持つと1pipsが10円なので、式はこうなります。

POINT

サイジングする口座1つに必要な資金 = 10,000 × 損切りpips ÷ リスク率(%)
損切り30pips・リスク1%なら、1口座あたり30万円。

そしてここからが今回の本題なんですけど、この下限は「1口座あたり」なんですよ。口座を分けるということは、この下限を口座の数だけ用意するということです。実際に並べてみました。

損切り幅 リスク率 1口座 2口座 3口座
20pips 1% 20万円 40万円 60万円
20pips 2% 10万円 20万円 30万円
30pips 1% 30万円 60万円 90万円
30pips 2% 15万円 30万円 45万円
50pips 1% 50万円 100万円 150万円
50pips 2% 25万円 50万円 75万円
120pips 1% 120万円 240万円 360万円
120pips 2% 60万円 120万円 180万円

見てのとおりなんですけど、日足でトレードしたくて損切りを120pips取る人がリスク1%を守ろうとすると、口座1つでも120万円要るんですよね。3つに分けたいなら360万円です。ここまで来ると、もう「役割分担」とか言ってる場合じゃないと思うんですよ。

注意

この下限が要るのは「リスク率でロットを毎回逆算する口座」だけです。ボーナスを寝かせておく口座、少額で操作感を試す検証用の口座、決め打ちのロットで長期ポジションを置くだけの口座には当てはまりません。つまり設計するときに数えるべきなのは、口座の総数ではなくサイジングする口座が何個あるかのほうなんですよね。

ちなみに私、いま口座は4つ持ってるんですけど、リスク率で毎回ロットを計算してるのは1つだけなんですよ。残りはボーナスの受け皿・検証用・長期ポジションの置き場で、どれもロットは固定です。この配分に組み替えてから、「資金が足りなくて計算どおりに発注できない」みたいな詰まりがほぼ無くなったので、個人的にはこの数え方はおすすめできると感じています。

分散は「稀な大事故に強く、日常のノイズに弱く」なる

③の「事故を伝播させたくない」の話です。

海外FXのゼロカット(追証なし)って、口座単位で効くんですよね。だから資金を分けておけば、1口座が窓開けで飛んでも他の口座は無傷で残る。これは事実です。

ただこれ、裏返すと「他の口座が助けに来られない」ということでもあるんですよ。同じ現象を違う角度から見てるだけなんですよね。

1つの深い容器と3つの浅い容器に同じ量の液体を分けた比較イメージ

総資金60万円で、円建てのペアを0.3ロット(1pips=300円)持つケースで並べてみます。ストップアウトの水準は業者ごとに違うので、ここでは単純に「残高が尽きるまでの距離」で見ます。

資金の置き方 その口座の資金 0.3ロットの耐久距離 1件の事故で失う上限
1口座に集約 60万円 約2,000pips 60万円(総資金の全部)
2口座に分散 30万円 約1,000pips 30万円(総資金の1/2)
3口座に分散 20万円 約667pips 20万円(総資金の1/3)

耐久距離が3分の1になって、失う上限も3分の1になる。きれいに等価なんですよね。分散ってリスクを減らしてるんじゃなくて、「伝播しない代わりに、1件あたりが早く死ぬ」に組み替えてるだけなんですよ。

じゃあ意味がないのかというと、そうでもないと思ってて。この2つ、効く場面が違うんですよね。

  • 窓開けやフラッシュクラッシュみたいな稀な大事故には分散が強い。集約してたら総資金が消える場面で、失うのが1口座分で済む
  • 一方で日常のノイズには分散が弱い。耐久距離が短いぶん、集約してたら耐えられたはずの揺り戻しでストップアウトを踏む

なので「事故を伝播させたくない」を理由に分けるなら、分けた各口座で、その口座の資金に合わせてロットを下げ直さないと意味がありません。ここを直さずに口座だけ分けると、ただ薄い口座を並べただけになっちゃうんですよ。

レバレッジの「段」は口座ごとに決まる

もう1個、分散すると変わるものがあります。

Exnessみたいに残高(有効証拠金)に応じて最大レバレッジが段階的に下がる業者だと、資金をどこに置くかでその段が変わるんですよ。残高が小さいほど上の段、つまり高いレバレッジに居られる設計になってます。

つまり集約していると、しきい値を1回またいだ瞬間に、その口座で持ってる全ポジションの上限が一斉に下がる。分散していれば、下がるのはまたいだ口座だけで済む、ということですね。

注意

このしきい値の金額、調べた2つの情報源で食い違ったんですよね。段の形(無制限→2,000倍→1,000倍→500倍)はどちらも同じなんですけど、境界の金額が1段ぶんズレていました。途中で制度が変わった可能性が高いと思うので、具体的な金額はここには書きません。自分の資金額がどの段に入るかは、必ず公式サイトの最新の表で確認してください。無制限レバレッジのほうには取引回数・ロット数の条件も別途あります。

ただ、ここはあんまり過大評価しないほうがいいとも思ってます。資金管理の記事でも書いたんですけど、レバレッジが変えるのは必要証拠金だけで、1pipsあたりの損益はロット数だけで決まるんですよね。段が上がっても、さっきの表の耐久距離は1ミリも伸びません。「分散するとレバレッジが有利」は資金効率の話であって、リスクの話ではないんですよ。

いちばん危ないのは、役割分担が「両建て」に化けること

正直、この記事でいちばん伝えたいのはここかもしれないです。

役割分担で口座を分けると、気づかないうちに規約違反の両建てになっているというパターンがあるんですよ。

長期保有用の口座でドル円のロングを持ってる。で、短期用の別口座で「ここは下げそうだな」とショートを入れる。トレーダーの頭の中では完全に別々の作戦なんですけど、業者から見ると同一名義で反対方向のポジションを同時に持ってる状態なんですよね。

複数の情報源で確認した限りでは、扱いはこうでした。

  • 同一口座内の両建て → 認めている業者が多い
  • 同一業者の複数口座をまたいだ両建て → 禁止
  • 異なる業者をまたいだ両建て → 禁止

理由もはっきりしてて、片方の口座でわざとゼロカットを発動させて損失を打ち切り、もう片方で利益を伸ばす、ということができちゃうからなんですよね。ゼロカットが口座単位で効くという、さっきの話のちょうど裏側です。

注意

ペナルティは口座凍結・利益の取り消し・出金拒否・強制退会など。しかも両方の業者で同時に食らう可能性があります。検知は同一IPからのアクセス、同じ銘柄・同じロットの取引が同時に並ぶパターン、グループ会社間での情報共有などとされています。規約の細かい線引きは業者ごとに違うので、口座を分ける設計をした時点で、使う全社の利用規約を必ず読んでください。なお複数口座を持つこと自体は、ほとんどの業者で禁止されていません。禁止されているのは特定の両建て行為だけです。

なので設計段階で決めておくべきなのは、「どの口座とどの口座が同じ通貨ペアを触りうるか」なんですよ。役割で分けるときに通貨ペアまで分けてしまうのが、いちばん安全だと思います。

税金は分けても損しない。ただし年をまたぐと詰む

税務まわりも確認しておきました。ここは国税庁のページで裏が取れます。

タックスアンサーNo.1521の注3に、第一種金融商品取引業を行う者または登録金融機関以外との店頭デリバティブ取引は申告分離課税ではなく総合課税になる、と書いてあります。海外FXがこれに当たるので、雑所得の総合課税ですね。

で、その注1のロに「雑所得の範囲内での損益の通算は可能」とある。つまり海外FX同士なら、口座を何個に分けていても年間の損益は合算できるんですよ。口座を分けたこと自体による税務上のペナルティは無いということです。ここは安心していいところですね。

ただ、落とし穴が2つあって。

1つは、同じ注1のロに「取引所取引に係る先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算もできません」とある点です。国内FXとは通算できない。国内と海外にまたがる役割分担を考えてる人は、ここだけは完全に別勘定になります。

もう1つが繰越控除なんですけど、申告分離課税のほうには3年間の繰越控除があるのに、注1の総合課税扱いのほうにはこの規定が無いんですよね。つまり海外FXは年をまたいだ通算ができません。口座Aで年内に大きく削られて、口座Bで年明けに取り返した、という展開だと、通算できずに丸ごと課税されます。役割分担で「今年はこっちを寝かせておこう」みたいな運用をするなら、損益は同じ年の中で完結させておくべきなんですよ。

このあたりは税率まで含めて別の記事で計算したので、気になる人はそちらもどうぞ。

役割別に、どの業者を当てるか

ここまでを踏まえて、私がいまどう当てはめてるかを書いておきます。あくまで一例で、これが正解ということではないです。

回転させる口座(サイジングする口座): ここが本命なので、コストの薄さとロットの刻みの細かさで選びます。Exnessは最小ロット0.01で、口座タイプによっては手数料型の低スプレッド口座が選べるので、上の計算をそのまま当てる相手としては噛み合いがいいと思ってます。指標発表の前後はレバレッジ制限がかかるので、そこだけ癖として覚えておく感じですね。

ボーナスで証拠金を厚くする口座: 入金ボーナスがある業者を当てます。XMだとスタンダード口座がこれですね。ただ、ここはサイジング口座にしないほうがいいと私は思ってて。というのも、ボーナスって出金できないうえに出金時に比例して消えるので、現金と同じ重みで資金管理の計算に入れると数字が狂うんですよ。ロット固定で回す置き場にしておくほうが素直だと思います。

検証用の口座: これは少額で十分です。ここには下限の計算も要りません。

まとめると、口座の数そのものより、サイジングする口座を1つに絞れているかどうかのほうがずっと効くな、というのが今の実感なんですよね。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

  • 口座を分ける正当な理由は「同じ口座では両立しない設定」「成績を混ぜたくない」「事故を伝播させたくない」の3つだけ
  • リスク率でロットを逆算する口座には資金の下限がある。式は10,000 × 損切りpips ÷ リスク率(%)。損切り30pips・リスク1%なら1口座30万円、3口座なら90万円
  • だから数えるべきは口座の総数じゃなくて、サイジングする口座の数のほう
  • 分散は「稀な大事故に強く、日常のノイズに弱い」に組み替える操作で、リスクの総量は減らない。分けたら各口座でロットを下げ直すこと
  • レバレッジの段は口座単位で決まるけど、変わるのは必要証拠金だけ。耐久距離は伸びない
  • いちばん危ないのは、役割分担が異業者間・複数口座間の両建てに化けること。使う全社の規約を読むこと
  • 海外FX同士は雑所得内で損益通算できるので、分けたこと自体のペナルティは無い。ただし国内FXとは通算できないし、年をまたいだ繰越もできない

数字はどれも私が自分で計算したものなので、自分の資金額と損切り幅に置き換えて、一度確かめてみてくださいね。