海外FX業者のサイトの下のほうに、「ASIC 374409」「CySEC 412/22」みたいな番号がずらっと並んでるの、見たことありますよね。あれ、私はずっと「まあ書いてあるってことは本物なんだろうな」くらいの感覚で流してたんですよ。
でも先日、XS.comの法定書類を読み込む記事を書いたときに、自分で書いていて引っかかったんですよね。番号が書いてあることと、その番号が当局の登録簿に実在することは、別の話じゃないですか。しかも番号が実在したとして、その免許が何をしていい免許なのかまでは、バッジを見ても一切わからないんです。
というわけで今回は、業者が名乗っている番号を当局の公開登録簿で自分で引く手順をまとめます。ASIC(豪)・CySEC(キプロス)・FSCA(南ア)・FSA(セーシェル)の4つを実際にやってみました。結論から言うと、4つのうち私がその場で引き切れたのは2つだけでした。そして引けたほうで、正直かなり意外なものが出てきたんですよね。
そもそも「登録簿」って誰でも見られるの?
見られます。というのも、金融当局には「認可した業者のリストを公開する」義務があるところがほとんどなんですよ。だから業者の宣伝を信じなくても、当局側から突き合わせられるようになってるんですよね。
やることは、要するにこの3つだけなんですよ。
- 業者サイトのバッジから「当局名+番号+法人名」を控える(番号だけだと足りないんですよ。法人名とセットで控えるのが大事)
- その当局の公開登録簿を開いて、番号か法人名で検索する
- ヒットした内容が、自分の口座と関係あるかを読む(ここが一番大事なんですけど、たいてい飛ばされます)
POINT
今回は題材としてXS.comのバッジに並んでいた番号を使いました。特定の業者を叩きたいわけじゃなくて、法人一覧とライセンス番号をきちんと全部公開している業者じゃないと、そもそもこの検証ができないからです。番号を出していない業者のほうが、確認のしようがないぶん困ります。
①ASIC(オーストラリア):CSVを丸ごと落とせるので一番ラク
ASICはブラウザ用の検索ページもあるんですけど、実はオーストラリア政府のオープンデータサイト(data.gov.au)に、AFSライセンス保有者の全件CSVが置いてあります。「ASIC – Australian Financial Services Licensee Dataset」という名前で、ライセンスはCC BY 3.0 AU。2025年2月から毎週木曜更新になっています。
私が落としたファイル(2026年9月23日更新分)は約11MB、登録業者は6,526件でした。ここから「374409」を検索すると、一発でこれが出てきます。
| 項目 | 登録簿の内容 |
|---|---|
| AFSライセンス番号 | 374409 |
| 法人名 | XS PRIME LTD |
| ABN/ACN | 92 141 194 934 |
| ライセンス開始日 | 2010年9月13日 |
| 所在地 | シドニー(NSW) |
番号も法人名も、業者サイトの表記とぴったり一致しました。ここまでは「ちゃんとあるじゃん」で終わる話なんですけど、面白いのはこの先なんですよね。
ASICのデータにはAFS_LIC_CONDITIONという列があって、そこに「この免許で何をしていいか」が全部書いてあります。XS PRIME LTDのぶんを読むと、外国為替契約(Foreign exchange contracts)の助言も取扱いも認められています。ただ、項目のひとつひとつに付いている顧客区分が、全部「Wholesale clients」なんですよね。
1,170文字ある条件欄を全文検索しても、「retail(個人顧客)」という単語は一度も出てきませんでした。つまりこのASICライセンスは、法人・機関投資家みたいなプロ向け専用ってことなんですよね。
注意
これは「嘘をついている」という話ではありません。ASICの認可を受けているのは事実ですし、XSの顧客約款を読むと、そもそもxs.comで開く口座の契約相手はセーシェル法人だと明記されています。だから話は最初から矛盾していないんです。問題はバッジだけを見た読者が「ASIC管轄の口座なんだな」と受け取ってしまうこと。番号を引くと、その誤解がその場で解けます。
ちなみに、これはXSに限った話じゃないんですけど、CSVを全件集計してみたら面白いことが分かりました。外国為替契約を扱えるAFSライセンス保有者は6,526件中281件。そのうち条件欄に「retail」が出てくるのは113件だけでした。残りの約6割は個人向けじゃないんです。「ASIC登録=個人が守られる」ではない、というのは数字でも出ます。
②FSA(セーシェル):法人名は確認できるけど、番号は載っていない
セーシェルのFSAはfsaseychelles.scの「Regulated Entities」→「Capital Markets」に一覧があります。タブが業種別に分かれていて、海外FX業者が該当するのはSecurities Dealer(証券ディーラー)のタブです。
2026年9月25日時点で、このタブに載っている証券ディーラーは231社。アコーディオンを開くと、法人名・住所・電話・メール・代表者が出てきます。実際に探したら、こんな感じでした。
| 法人名 | 屋号 | 所在地 |
|---|---|---|
| XS LTD | — | Azores Building 3階, Ile du Port, Mahe |
| Exness (SC) Ltd | — | Eden Island, Mahe |
| XM (SC) Limited | XMGlobal | OST Building, Providence, Mahe |
3社ともきちんと載っていました。ここは素直に安心できるところだと思います。海外FX業者って登録簿に当たると意外とちゃんと載ってるんですよ。
ただ、この一覧にはライセンス番号が一切書かれていません。ページのHTMLを「SD」で検索しても0件でした。だから「XS LtdがSD089を持っている」のSD089の部分だけは、この登録簿では確認できないんですよ。確認できるのは「その法人が証券ディーラーとして認可されている」という事実までなんですよ。ここは正直に書いておきます。
③CySEC(キプロス)・④FSCA(南アフリカ):今回は直接は引けませんでした
この2つは、私の環境からは当局サイトそのものに接続できませんでした。CySECもFSCAも、接続はするのに応答がまったく返ってこないんですよね。おそらく海外のデータセンター経由のアクセスを弾く設定なんだと思うんですけど、普通のブラウザから個人が開くぶんには問題なく見られるはずなので、そこは誤解しないでください。
それぞれの入口だけ置いておきます。
- CySEC:
cysec.gov.cyの「Investment Firms(Cypriot)」。CIFライセンス番号(◯◯/◯◯形式)か社名で検索します - FSCA:
fsca.co.zaの「Entity/Persons Search」。FSP番号か社名で検索します
参考までに、検索エンジン経由で見えた範囲では、CySEC 412/22はXS Markets Ltd(旧RockFrost Ltd)、キプロス会社番号HE 386563、認可日2022年4月4日となっていました。ただしこれは当局サイトを私が直接読んだものではないので、参考値として扱ってください。FSCAのFSP 53199は未確認のままです。
やってみて分かった、番号を引くときのコツ
POINT
今回いちばん効いたのは、番号が合ってるかどうかより、条件欄を読むほうが情報量が多かったことです。番号はだいたいちゃんと実在するんですよ。業者がわざわざ嘘の番号を書く動機はあまりないので。差がつくのは「その免許が誰向けか」のほうで、そこはASICのように条件欄まで公開している当局じゃないと読めません。私はこれをやってから、業者比較の記事で「ライセンス保有」の一言で済ませるのをやめました。
実務的なコツを3つだけ書いておきますね。
- 検索は番号じゃなく法人名でもやる。番号の表記ゆれ(スペース有無、スラッシュ)でヒットしないことがあるので、両方で当たると確実です
- 「登録がある」と「自分の口座がその登録の下にある」は完全に別物。ここを混ぜると全部間違えます。自分の口座がどの法人かは、当局サイトじゃなくて顧客約款の1ページ目に書いてあります
- CSVが配られている当局はCSVを使う。ASICみたいに全件データが落とせるところなら、検索フォームと格闘するより手元で探したほうが速いし、条件欄まで全部読めます
あと、日本在住で取引するなら最後にもう1か所あるんですよね。金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」(fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html)です。海外FX業者は基本的にここには載っていません。これは当サイトでも繰り返し書いているとおり、日本の金融庁に登録していない業者を自己判断で使う、という前提の上での話です。そこは各自で納得した上で選んでください。
この確認が特に効く業者のタイプ
今回の手順が一番役に立つのは、複数国に法人を持っていて、バッジがたくさん並んでいる業者なんですよね。バッジが多いほど「どれが自分に効いているのか」が見えにくくなるので。
逆に、自分がどの法人と契約しているかを分かりやすく開示している業者だと、確認自体があっさり終わります。たとえばExnessはセーシェルFSAの証券ディーラー一覧にExness (SC) Ltdとして実際に載っていて、私も今回その場で確認できました。スキャルピング用途で見ている人も多いと思いますが、こういう「自分で裏を取れる状態になっているか」も、業者を選ぶときの判断材料にしていいと思うんですよ。
もちろん、どの業者を選ぶにしても、契約相手の法人と準拠法は口座開設前に自分で確認するのが前提です。最新の登録状況は各当局のサイトで変わることがあるので、重要な判断をする前にはもう一度ご自身で当たってみてください。
FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。
まとめ
POINT
・ライセンス番号は当局の公開登録簿で誰でも引ける。ASICはCSV全件が政府オープンデータで配布されていて一番ラク
・ASIC 374409(XS PRIME LTD)は実在したが、条件欄は全項目が「Wholesale clients」で、retailの記載は0件
・セーシェルFSAの証券ディーラー一覧(231社)にはXS・Exness・XMの各法人が載っている。ただしライセンス番号は表示されない
・CySECとFSCAは今回の環境からは直接引けず。ブラウザからは開けるはずなので各自で
・一番大事なのは番号の一致より「その免許が誰向けか」。自分の口座の契約相手は約款1ページ目で確認する
正直、この作業って地味なんですよ。CSVを落として検索するだけなので、盛り上がりも何もないんですけど、今回みたいにバッジの印象と登録簿の中身がズレているのが1回でも見つかると、業者選びの解像度がけっこう変わるんですよね。
いま口座を持っている業者があるなら、そのバッジの番号を1つだけでいいので引いてみてほしいんですよね。ASICならCSVを落として検索するだけなので、5分もかからないです。私はこれをやるようになってから、「ライセンスあるから大丈夫」という言い方をしなくなりました。
