今週(2026年10月7日〜13日)の経済指標カレンダーを開いたら、びっくりするくらいスカスカだったんですよね。★5がひとつも無い。本数も44本で、先週(9/30の週)が105本だったので半分以下です。
で、暇だったので変なことが気になりまして。経済指標カレンダーの「重要度★」って、実際どのくらい当たってるんでしょう? ★5の日は身構えるし★2なら無視する、みんな何となくそうしてると思うんですけど、私はその「何となく」の根拠を見たことがないんですよ。
なので14週分のカレンダーを全部ダウンロードして、1,026件の変動幅を自分で数えてみました。結論から言うと、★4は★2とほとんど区別がつきませんでした。
まず事実確認: 今週のカレンダー
先に今週の予定です。日本時間で並べました。
| 日時(JST) | 重要度 | 指標 |
|---|---|---|
| 10/8(木) 03:00 | ★4 | 米・FOMC議事録(9月会合分) |
| 10/8(木) 08:50 | ★3 | 日本・国際収支(8月) |
| 10/9(金) 21:30 | ★3 | カナダ・雇用統計(9月) |
| 10/9(金) 23:00 | ★4 | 米・ミシガン大学消費者信頼感指数(10月速報) |
| 10/13(火) 15:00 | ★3 | 独・消費者物価指数(9月確報) |
| 10/13(火) 23:00 | ★4 | 米・中古住宅販売件数(9月) |
目玉は10/8(木)深夜3時のFOMC議事録なんですよね。9月会合(9/15〜16)で何が話されていたかの記録です。
POINT
日本時間3:00は米東部時間だと前日の14:00です。FRB公式のFOMCカレンダーで2026年分を数えると、1月会合→2/18、3月→4/8、6月→7/8、7月→8/19と全部「会合2日目の21日後」。9月会合は9/16終了なので+21日で10/7(米時間)になります。公式サイトにまだ議事録のリンクは出ていないので、これは事前告知ではなくルールからの計算値です。
★と「実際に動いた幅」を1,026件数えた
使ったのはみんかぶFXの経済指標カレンダーで、2026年7月8日〜10月13日の14週分です。このカレンダーには「前回ドル円変動幅」という列があって、ページの注記にこう書いてあります。
※前回変動幅…前回の発表から10分後にドル円が何pips変動したか。
定義がちゃんと公開されてるのが偉いんですよ。この数字を★ごとに集計したのが下の表です。方向は無視して絶対値にしてあります。
| 重要度 | 件数 | 中央値 | 平均 | 最大 | 5pips未満 | 20pips以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ★1 | 46 | 2.2pips | 3.6pips | 26.7pips | 80.4% | 2.2% |
| ★2 | 386 | 2.6pips | 3.9pips | 35.8pips | 71.5% | 1.0% |
| ★3 | 443 | 3.5pips | 6.7pips | 124.8pips | 66.8% | 5.2% |
| ★4 | 121 | 4.1pips | 6.4pips | 30.9pips | 61.2% | 4.1% |
| ★5 | 30 | 8.9pips | 22.8pips | 124.8pips | 36.7% | 33.3% |
見てほしいのは中央値です。★2が2.6pips、★3が3.5pips、★4が4.1pips。一応★が増えるほど上がってはいるんですけど、差が1.5pipsしかない。スプレッド1〜2pipsの世界で1.5pipsって、ノイズと区別がつかないんですよね。
念のため★と変動幅の順位相関も出したら0.175でした。傾向としては存在するけど予測には使えない、という弱さです。一方で★5だけは明らかに別格でした。中央値8.9pips、20pips以上が3分の1。★4までとは完全に別の分布なんですよ。
注意
この集計は1社のカレンダーの数字を数えたものです。★の付け方は媒体ごとに違いますし、変動幅も「10分後の1点」というこのサイト独自の定義です。他社で同じことをやれば数字は変わります。「ひとつの物差しで測るとこうなった」という話として読んでください。
★5でも4割は5pips未満だった
別格と書いたんですけど、中身がもっと面白いんですよね。★5の30件のうち11件(36.7%)は10分後の変動が5pips未満でした。英中銀政策金利(7月)が1.8pips、米ISM製造業が0.9pipsと1.1pips、米PMI速報が0.5pips、ECB政策金利(7月)が4.3pips。
政策金利ですよ。★5の最高峰みたいな顔をしたイベントが、10分後には2pipsも動いてない。事前に全員が織り込んでいて予想どおりなら何も起きない、という当たり前の話なんですけど、数えると結構衝撃があるんですよね。
逆に同じ★5には124.8pips(9/4の米雇用統計)や84.3pips(8/7の米雇用統計)もあります。つまり★5は「必ず動く」ではなく「動く日と動かない日に二極化する」のが実態です。
「10分後の1点」が見落としているもの
ここで数字の作り方の話をさせてください。この変動幅、定義が「発表から10分後の値」なんですよ。10分間の値動きの大きさではなく、10分後の1点だけなんですよね。
何が困るかというと、飛んで戻った動きがほぼ見えないんです。仮の数字で説明しますね。発表直後に+38pips飛んで10分かけて戻り+3pipsで落ち着いたパターンと、最初からじわじわ動いて+3pipsになったパターン。記録される数字はどちらも「+3.0pips」で同じです。でも期間中の最大変動は38pipsと3pipsで12.7倍の差があります。
そして海外FXで実際に痛いのは、だいたい前者なんですよね。スプレッドが開くのも逆指値が滑るのも約定が遅れるのも、発表から数秒〜数十秒に集中します。その一番荒れている時間帯は★にも変動幅にも出てこないので、この列は「相場がどっちに傾いたか」を見る数字として読むのが正しいです。「どれくらい荒れたか」の指標だと思って見てた私が間違ってました。
もっと厄介なのが「同時刻」問題
集計していて一番驚いたのがこれなんですけど、そもそも「この指標が何pips動かした」という言い方自体が無理なんですよね。
14週分で発表の時刻スロットは447個ありました。そのうち2系列以上が並ぶのが269個、別々の指標が同じ分に同居しているスロットが117個(26.2%)。1スロットに最大12本詰まっている日もありました。
21:30に米雇用統計とカナダ雇用統計が同時に出る日(9/4がそれです)、ドル円が124.8pips動いたとして、それは米のせいなのかカナダのせいなのか。値動きは1本しかないので分離できないんですよね。
さらに決定的なのを見つけてしまいました。同じ時刻なのに変動幅の数字が食い違っているスロットが76個(17.0%)あったんです。7月9日21:30の米・新規失業保険申請件数は、同じ発表の中で2行に分かれているんですけど、[継続受給者数]の行が-6.1pips、[新規申請件数]の行が-84.3pipsになってました。
同じ時刻、同じ発表です。ドル円の値動きは1本しかないので、少なくともどちらかはその発表の数字ではありません。おそらく2系列は集計対象の週がずれていて(継続受給者数は1週前のデータ)、「前回」が指す回が行ごとに違っているんだと思います。
POINT
実務的には「★がいくつか」より「その時刻に何本重なるか」を見るほうが役に立ちます。重なっている時刻ほど参加者の注目が集中していて、スプレッドもスリッページも悪化しやすい。カレンダーの行数を数えるだけなので誰でもできます。
あと「予想」が無い指標が6割ある
今週の44行のうち、事前予想の欄が空欄なのは27行(61%)でした。予想が無いとサプライズの定義ができないんですよね。相場が動くのは「予想と結果のズレ」なので、予想が無いと結果を見ても大きいのか小さいのか判断できない。今週で予想が入っているのはミシガン大消費者信頼感(予想47.7、前回48.1)くらいです。
今後の注目ポイント
今週がスカスカな分、来週以降は一気に混みます。★4以上を拾うとこの並びでした(日本時間)。
- 10/14(水) 21:30 米・消費者物価指数(9月) ★4
- 10/15(木) 21:30 米・小売売上高(9月) ★5
- 10/23(金) 22:45 米・PMI速報(10月) ★5
- 10/29(木) 03:00 米・FOMC政策金利(10/27〜28会合) ★5
- 10/29(木) 21:30 米・GDP速報(第3四半期)/PCE価格指数 ★5・★4
- 10/29(木) 22:15 ECB政策金利 ★5
- 10/30(金) 日銀政策金利 ★4
- 11/6(金) 22:30 米・雇用統計(10月) ★5
10/29が渋滞しすぎててちょっと笑っちゃうんですけど、FOMC・米GDP・ECBが同じ日に全部来ます。さっきの「何本重なるか」で言うと、この日は相当要注意なんですよ。
それと11月の雇用統計が22:30になっているのに気づきましたか? 今は21:30なんですよ。米国の夏時間が11月1日に終わるためで、日本に夏時間が無いので米指標の日本時間が1時間後ろにずれます。カレンダー上でも10/30までは21:30、11/4以降は22:30でした。毎年ここで指標を見逃す人がいるので、11月から1時間後ろと覚えておいてください。
で、肝心の「荒れ方」はどこで確認するのか
今回数えてわかったのは、カレンダーの★と変動幅は「方向」と「注目度」の目安までで、取引条件の悪化はそこに載っていないということでした。発表の瞬間にスプレッドがどこまで開くか、逆指値がどれだけ滑るか。業者ごとに違うはずなんですけど、公開情報からは確認できないんですよ。各社の「約定力に自信あり」みたいな表現を見ても、何を測った数字なのか書いていないので比較できません。
なので結局、自分の口座で小さいロットを置いて実測するのが一番早いと思います。指標の時刻にスプレッドのスクショを撮るだけでも、自分の業者の癖はだいぶ見えてくるんですよね。
FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。
まとめ
- ★2・★3・★4の変動幅は中央値2.6/3.5/4.1pipsでほぼ団子。★と変動幅の順位相関は0.175でほぼ無関係に近い
- ★5だけは別格(中央値8.9pips・20pips以上が33.3%)。ただし4割近くは5pips未満で二極化している
- 変動幅の定義は「発表から10分後の1点」。飛んで戻った動きは記録に残らないので、荒れ方の指標としては使えない
- 別の指標が同じ分に同居するスロットが26.2%、最大12本。「この指標がX pips動かした」は原理的に言えない
- 同じ時刻で数字が食い違うスロットが17.0%。カレンダーの数字は鵜呑みにせず、どの回を指しているか確認が必要
- 11月1日の米夏時間終了で、米指標の日本時間が1時間後ろへ(雇用統計は21:30→22:30)
正直、数える前は「★5は危ない、★2は無視」くらいの雑な使い方をしてたんですけど、今は★の数よりその時刻に何本重なっているかを見るようになりました。カレンダーの行数を数えるだけなので、よかったら試してみてください。
