損切り幅は「勘」で決めない|ATRで機械的に決めると、ロットまで自動で決まる

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損切り幅って、どうやって決めてますか。

「だいたい20pips」「直近安値の少し下」あたりが多いんじゃないかと思うんですけど、私はこれがずっと気持ち悪かったんですよね。というのも、同じ20pipsでも、静かな相場の20pipsと荒れてる相場の20pipsは意味がまったく違うから。前者なら十分な余裕があるのに、後者だとただのノイズで刈られて終わりです。

じゃあ何を基準にすればいいのか。ここで出てくるのがATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)という指標なんですけど、今回はこれを使って損切り幅を機械的に決める方法と、そこからロット数まで自動的に決まってしまうという話をします。後半は自分で計算した早見表を載せてるので、そこだけ見てもらってもいいです。

ATRって結局なにを測ってる指標なの?

ATRは一言でいうと「1本のローソク足が平均してどれくらい動いてるか」を測る指標です。方向は一切見ません。上がろうが下がろうが、動いた幅だけを見ます。

計算のベースになるのが「トゥルーレンジ(TR)」という値で、MetaTrader 5の公式ヘルプにはこう書いてあります。次の3つのうちいちばん大きい値がTR。

  • 現在の高値と安値の差
  • 前の足の終値と現在の高値の差
  • 前の足の終値と現在の安値の差

で、このTRを移動平均したものがATRです。開発したのはウェルズ・ワイルダーという人で、RSIとかパラボリックSARと同じ作者なんですよ。ちなみに発表されたのは1978年の著書で、けっこう古い指標なんですよね。

わざわざ3つも比べてるのは窓(ギャップ)を拾うためなんですけど、これが地味に効きます。月曜の朝に窓を開けて始まった足って、ローソクの実体だけ見ると小さかったりするじゃないですか。でも実際には前の終値からガッと飛んでるわけで、そこを「動いてない」と判定されると困る。TRの定義はそこをちゃんと拾ってくれます。

期間はデフォルトで14。TradingViewの内蔵スクリプトも、一般的な解説も14で揃ってるので、まずはそのままでいいと思います。

読み方は素直で、ドル円の1時間足でATRが0.30と出てたら30pips、日足で1.00なら100pipsです。要するに「この時間足のローソク1本は、平均して30pips動いてますよ」ということなんですけど、慣れるまではここで一瞬詰まるかもしれません。表示されてる数字は価格の単位そのままなので、pipsに直すだけです。

倍率に「正解」は無い、という話を先にしておきます

ATRで損切り幅を決めるやり方自体はシンプルで、損切り幅 = ATR × 倍率。これだけです。エントリー価格からこの幅だけ離したところに逆指値を置きます。

問題は倍率のほうなんですけど、調べれば調べるほど、この数字は情報源によってバラバラでした。

注意

今回あたった範囲だと、「1.0倍(ATRそのもの)」「1.0〜1.5倍」「1.5〜2倍」「2〜3倍」と、解説によって推奨値がまったく揃っていませんでした。つまり業界標準として確立された倍率は存在しません。「ATRの2倍が正解」みたいに書いてある記事を見かけたら、それは筆者のスタイルであって普遍のルールではない、と受け取ったほうがいいです。

これ、最初は「どれを信じればいいんだ」と思ったんですけど、よく考えたら当たり前なんですよね。倍率って「ノイズをどこまで許容するか」というトレードスタイルそのものだから、正解が一つに決まるほうがおかしい。短期で回数を打つなら小さく、スイングで大きな波に乗るなら大きく、というだけの話です。

なので私は1.5倍を基準にして、そこから自分の手法に合わせて動かすという置き方をしています。以下の計算も1.5倍で統一しますが、そこは各自で読み替えてください。大事なのは数字そのものじゃなくて、毎回同じルールで決めることのほうなので。

本題: 損切り幅が決まると、ロットは「計算するだけ」になる

ここからが今回いちばん書きたかったところなんですけど、ATRの本当の価値は損切り幅じゃなくてその先にあるロット数だと思ってます。

以前資金管理の記事で書いた式をもう一度出しておきます。

POINT

ロット = 許容損失額 ÷ (損切りpips × 1pipsの価値)
ドル円で1ロット=10万通貨なら、1pipsの価値は1,000円です。

この式、損切りpipsが分母に入ってるじゃないですか。ということは損切り幅をATRから機械的に出せば、ロットも機械的に出てくるんですよ。自分で決める余地はどこにもない。

実際に計算してみます。資金10万円・1回のリスクは2%(=許容損失2,000円)・ドル円・倍率1.5倍という条件で、ATRの値だけ変えて並べたのがこの表です。

そのときのATR 損切り幅
(ATR×1.5)
計算上のロット 実際に置くロット
(0.01刻み)
実際の損失額
8pips 12pips 0.1667 0.16 1,920円
12pips 18pips 0.1111 0.11 1,980円
20pips 30pips 0.0667 0.06 1,800円
30pips 45pips 0.0444 0.04 1,800円
50pips 75pips 0.0267 0.02 1,500円
80pips 120pips 0.0167 0.01 1,200円

見てほしいのはいちばん右の列がほぼ動いてないことです。ATRが8pipsのときと80pipsのときで、相場の荒れ方は10倍違う。それでも失う金額は2,000円の枠に収まったままなんですよね。

これがATRを使う一番のメリットだと思ってます。ボラティリティが上がったぶんだけ、ロットが勝手に下がる。「今日は荒れてるから小さめにしとくか」という感覚的な調整を、計算が代わりにやってくれるわけです。

逆に言うと、ロットを固定したまま損切り幅だけATRで広げるのは、いちばんやってはいけない使い方です。それだと荒れた相場でリスクだけが膨らみます。損切り幅とロットは必ずセットで動かしてください。

やってみて気づいた「最小ロットの壁」

この計算をいろんな条件で回してたときに、ちょっと面白いことに気づいたんですよ。

さっきの表、ATRが80pipsのところでロットが0.01ちょうどになってますよね。ここが底なんです。多くの海外FX業者は最小ロットが0.01なので、これ以上小さくできない。

じゃあATRがもっと大きかったらどうなるか。仮にATR140pips(損切り幅210pips)だと、計算上のロットは0.0095。0.01ロットでも許容損失2,000円をオーバーしてしまうんですよね。つまり資金10万円では、その相場にはそもそも入れないという結論になります。

これを「資金がいくらあれば、どこまでのボラに手を出せるか」に変換したのが次の表です。リスク2%・ドル円・倍率1.5倍のまま、最小ロット0.01で成立する上限を計算しました。

資金 許容損失(2%) 0.01ロットで置ける
損切り幅の上限
手を出せるATRの上限
5万円 1,000円 100pips 約67pips
10万円 2,000円 200pips 約133pips
20万円 4,000円 400pips 約267pips
30万円 6,000円 600pips 約400pips
50万円 10,000円 1,000pips 約667pips

資金5万円だとATR67pipsが天井。ドル円の1時間足なら普通に足りるんですけど、日足やゴールドみたいにATRが大きく出る対象は、そもそも土俵に上がれないことになります。「少額だと大きい時間足は無理」って感覚的には言われますけど、こうやって数字にすると理由がはっきりするんですよね。

POINT

私自身、しばらくこのルールで検証してみたんですけど、いちばん変わったのはメンタル面でした。エントリーのたびに「今回はどれくらい張るか」と考えなくてよくなるので、迷いが消えるんですよね。ATRを読んで、掛けて、割る。それだけ。裁量を減らすために指標を使うという発想は、個人的にはかなりおすすめできると感じています。

この決め方に向いている業者の条件

ここまでの話でわかるとおり、この手法はロットを細かく刻めるかどうかにかなり依存します。0.01刻みでしか置けないと、さっきの表のように切り捨てで設計とズレますし、そもそも下限で詰まる。

その意味で相性がいいのがExnessなんですよね。複数の情報源で確認した限りでは、Exnessは全口座タイプで最小ロット0.01から取引できます。ここは他社と横並びなんですけど、面白いのはスタンダードセント口座の存在で、この口座だけ1ロット=1,000通貨という設計になっています(他の口座は1ロット=10万通貨)。

つまりセント口座の0.01ロットは、実質他口座の0.0001ロット相当。刻みの細かさが100倍になる計算です。さっきの「最小ロットの壁」が事実上なくなるので、資金が小さいうちにこのルールを試すには都合がいいと思います。

注意

ロットの仕様や口座タイプの条件は変わることがあります。上記は複数の独立した情報源で一致を確認した内容ですが、実際に口座を開く前に必ず公式サイトで最新の取引条件を確認してください。なお最大ロット数には時間帯による制限があるという情報もあり、大きく張る場合はそちらも要チェックです。

使うときに気をつけたいこと

最後に、注意点を3つだけ。

まずATRは方向を教えてくれません。「動く幅」の指標なので、買うか売るかの判断には一切使えない。エントリー根拠は別のところで用意しないといけないんですよね。ATRはあくまで入ると決めたあとの、幅とロットの担当です。

それから時間足を混ぜないこと。1時間足でエントリーするなら1時間足のATRを見ます。日足のATRで1時間足のトレードの損切りを決めると、当然おかしなことになるんですけど、これ意外とやりがちなんですよね。

あと指標発表の前後は数字が壊れます。ATRは過去14本の平均なので、静かな時間帯の平均値を持ってきて発表直後に使うと、幅がまったく足りません。というか発表前後はスプレッドも滑りも別物になるので、そもそも別のルールで考えたほうがいいと思います。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

長くなったので、要点だけ並べておきます。

  • ATRは「1本の足が平均どれだけ動くか」の指標。TRは高値安値差・前終値との差の最大値で、期間14が標準
  • 損切り幅 = ATR × 倍率。倍率に業界標準は無いので、自分で決めて固定する
  • 本題はその先。損切り幅が決まればロットは計算するだけになり、ボラが上がるとロットが自動的に下がる
  • 結果として1回あたりの損失額がほぼ一定に保たれる
  • ただし最小ロット0.01という下限があり、資金が小さいとボラの大きい対象には入れない

「勘で決めない」って書くと味気ないんですけど、実際やってみると判断を減らしたぶんだけ相場に集中できる感覚があります。損切り幅で毎回悩んでる人は、一度ATRを表示するところからやってみてもいいんじゃないでしょうか。