円高局面でドル円ロングを持ち越すと1日いくら?スワップ・スプレッド・証拠金拘束を分解して自前計算

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ドル円が9月上旬に節目の155円を割り込んで、154円台での推移が続いていますね。日銀の追加利上げ観測が意識されて、円買いの巻き戻しが進んだ格好です。

こういう円高局面でドル円のロングを持っていると、だいたいこう考えるんですよね。「まあスワップはプラスだし、持ってるだけならタダみたいなもんでしょ」と。私も昔そう思ってました。

でもこれ、けっこう危ない勘違いなんですよ。スワップが受取(プラス)であっても、ポジションを1日持ち越すのには確実にコストがかかっています。 というのも、コストはスワップだけじゃないからなんですよね。

そこで今回は、ドル円ロングを1日持ち越すと実際に何円かかっているのかを、費目ごとにバラして自前で計算してみます。業者が出しているスワップの数値をそのまま貼るだけの記事じゃなくて、自分の口座・自分のロット数で当てはめられる計算式と早見表にしていくのが今回の狙いです。

POINT

この記事の計算はすべて「ドル円1ロット(10万通貨)・1ドル=155円・スプレッド1.5pips」を仮の前提に置いています。実際の数値はご自身の口座条件に置き換えて使ってください。なお計算をシンプルにするため155円で置いていますが、2026年9月9日朝時点の実勢は154円台前半です。

持ち越しコストは3つの費目に分けられる

ポジションを持ち越したときにかかるものを整理すると、だいたいこの3つに分解できます。

  • 費目A: スプレッド — 建てた瞬間に確定する往復コスト。1回きり
  • 費目B: スワップポイント — 日をまたぐたびに発生。ドル円ロングなら通常は受取
  • 費目C: 証拠金の拘束 — その建玉を維持するために口座から動かせなくなるお金

ここで大事なのは、この3つは性質がまったく違うということなんですよね。Aは1回きり、Bは毎日、Cは金額として出ていくわけじゃない。だから「合計いくら」を出すには、全部を1日あたりに揃えてやる必要があるんです。

持ち越しコストを3つの費目に分解するイメージ

費目A: スプレッドは「日数で割る」と見え方が変わる

まず基本の単位から。ドル円1ロット(10万通貨)なら、1pips = 1,000円です。10万通貨 × 0.01円 = 1,000円、という単純な話ですね。

スプレッドが1.5pipsなら、往復コストは1,500円。これは建てた瞬間に確定します。

で、ここからが本題なんですけど、この1,500円を保有日数で割ってみると印象がガラッと変わるんですよ。

保有日数 スプレッドの1日あたり負担
1日 1,500円/日
2日 750円/日
3日 500円/日
5日 300円/日
7日 約214円/日
14日 約107円/日
30日 50円/日

短く持つほど1日あたりが重くなるんですよね。当たり前といえば当たり前なんですけど、「1日だけ持ち越す」は1日あたりのコストとしては最悪だという事実は、意外と意識されてない気がします。

費目B: スワップは受取。ただしpips換算すると小さい

ドル円ロングは、金利の高いドルを買って金利の低い円を売っている形なので、通常はスワップが受取になります。複数の情報源で確認した限りでは、2026年9月時点の政策金利は米国が3.50〜3.75%、日本が1.00%。日本は2026年6月の会合で0.75%から1.00%へ引き上げていて、これは31年ぶりの水準なんですよね。

金利差をFF金利の中央値3.625%で見ると、2.625%ポイント。これを1日あたりに直すとこうなります。

POINT

1日あたりスワップの理論値(円) = 取引数量(通貨) × 年間金利差 ÷ 365 × ドル円レート
1ロットなら → 100,000 × 0.02625 ÷ 365 × 155 = 約1,115円/日

ただしこれ、あくまで理論上の天井です。実際に業者が提示するスワップは、これよりだいぶ小さくなるんですよ。というのも、スワップは業者の収益源のひとつでもあって、各社が独自にマークアップ(上乗せ)をしてから提示しているからなんですよね。同じ通貨ペアでも業者間でかなり差が出ます。

なので具体的な業者のスワップ数値を貼るのはやめて、受取額のケース別に「それがpips換算で何pipsなのか」を出しておきます。こっちのほうが使えるので。

1日あたり受取スワップ pips換算 スプレッド1.5pipsの回収に必要な日数
300円/日 0.30pips/日 5.0日
500円/日 0.50pips/日 3.0日
700円/日 0.70pips/日 約2.1日
1,000円/日 1.00pips/日 1.5日

この表、地味なんですけど個人的にいちばん効いたんですよね。スワップ1日分って、pipsに直すとせいぜい0.3〜1.0pipsしかないんですよ。ドル円が1日で50pipsや100pips動くのは普通にあることを考えると、スワップは日々の値動きの1%前後のスケール感でしかない、ということになります。

注意

スワップは固定値ではなく、政策金利の変更や市場環境で日々変動します。ドル円ロングでも状況によってはマイナスに転じることがありますし、スワップフリー口座やその適用条件の有無も業者ごとに違います。また、受渡日(T+2)の関係で水曜日のロールオーバーでは3日分がまとめて付与されるのが一般的で、祝日が絡むとこのとおりにならないこともあります。最新の数値と付与ルールは必ず各社の公式サイトでご確認ください。

費目C: 証拠金拘束の正体は「必要証拠金」じゃない

ここが今回いちばん書きたかったところなんですけど、証拠金拘束のコストを「必要証拠金」で考えるのは、かなり実態からズレています。

1ロット・155円なら名目金額は1,550万円。レバレッジ別の必要証拠金はこうなります。

  • レバレッジ100倍 → 155,000円
  • レバレッジ500倍 → 31,000円
  • レバレッジ1000倍 → 15,500円

レバ500倍なら3.1万円で1ロット建てられる。安いですよね。でも、3.1万円だけ入れて1ロット持ち越したら、数十pipsの逆行でストップアウトします。

実際に必要なのは、「どこまで逆行に耐えたいか」から逆算した口座残高のほうなんですよ。ストップアウト水準を50%として式にするとこうなります。

POINT

実質的に拘束される資金 = 耐えたい変動幅の含み損 + (必要証拠金 × ストップアウト水準)
例) 3円の逆行に耐えたい1ロット → 300,000円 + (31,000円 × 50%) = 315,500円

これを耐久距離ごとに並べると、こうなります(1ロット・レバ500倍・ストップアウト50%)。

耐えたい逆行幅 そのときの含み損 実質拘束される資金 必要証拠金の何倍か
1円(100pips) 100,000円 115,500円 3.7倍
2円(200pips) 200,000円 215,500円 7.0倍
3円(300pips) 300,000円 315,500円 10.2倍
5円(500pips) 500,000円 515,500円 16.6倍
10円(1000pips) 1,000,000円 1,015,500円 32.8倍

3円の逆行に耐えるだけで、必要証拠金の10倍の資金が動かせなくなるんですよね。ドル円が3円動くのって、そんなに珍しくないじゃないですか。実際この9月も、数日で1円以上動いているわけで。

3つを1枚にまとめてみる

じゃあ全部足すとどうなるか。スワップ受取を500円/日、スプレッド1.5pips(1,500円)として、保有日数別の純額を出してみます。

保有日数 スワップ累計 スプレッド 純額 pips換算
1日 +500円 -1,500円 -1,000円 -1.0pips
3日 +1,500円 -1,500円 0円 0.0pips
7日 +3,500円 -1,500円 +2,000円 +2.0pips
14日 +7,000円 -1,500円 +5,500円 +5.5pips
30日 +15,000円 -1,500円 +13,500円 +13.5pips

ぶっちゃけ、この表がこの記事の結論みたいなものです。1ヶ月まるまる持ち越して、やっと13.5pips。 ドル円が1日で動く幅の、だいたい1〜2割です。

つまりスワップ狙いの持ち越しは、1ヶ月分の稼ぎが1日の値動きで簡単にひっくり返る構造になっているということなんですよね。「持ってるだけで得」どころか、方向が外れたら全部吹き飛ぶ。

ちなみに、さっきの拘束資金と組み合わせるともう一段はっきりします。スワップ500円/日は年18万2,500円。これを実質拘束資金で割った「見かけの年利」がこれです。

耐えたい逆行幅 実質拘束資金 見かけの年利換算
1円 115,500円 158.0%
2円 215,500円 84.7%
3円 315,500円 57.8%
5円 515,500円 35.4%
10円 1,015,500円 18.0%

年利158%とか出てくると一瞬おっと思うんですけど、これ、耐久距離を削れば削るほど数字が良く見えるだけなんですよ。年158%のケースは、1円逆行したら口座が飛ぶという意味でもあります。高い利回りは、短い耐久距離の対価として出てきているだけなんですよね。ここを取り違えると、たぶんいちばん痛い目を見ます。

POINT

私はこの計算を一度スプレッドシートに組んでから、持ち越しの判断がだいぶ楽になりました。というのも、迷ったときに見る数字が「スワップが何円か」から「この建玉、何pips分の値動きに耐えられて、その対価が1日何pipsか」に変わったからなんですよね。単位をpipsに揃えるだけで、スワップと値動きが同じ土俵で比べられるようになる。地味ですけど、個人的にはこれが一番効いた工夫だと感じています。

持ち越し前提なら、業者選びで見るべきところ

ここまでの分解を踏まえると、持ち越しを前提にするときに業者で見るべきポイントは絞れてきます。

  • スプレッドの狭さ — 短期の持ち越しほど1日あたりの負担が重いので、ここが直接効きます
  • スワップの提示水準とスワップフリーの条件 — マークアップの取り方は業者ごとに差があります
  • ストップアウト水準 — 低いほど同じ資金で耐久距離が伸びます
  • ゼロカット(追証なし)の有無 — 想定外の変動時に、損失が入金額までで止まるかどうか

この4つを同時に見られるという意味では、Exnessは選択肢に入れやすいと思うんですよね。スプレッドが狭めの口座タイプが用意されていて、ストップアウト水準も低め、ゼロカットも採用されています。ただし口座タイプごとに条件がかなり違うので、必ず公式サイトで最新の条件を確認してから選んでください。

スワップ狙いというより「金利差を取りつつスプレッドを削りたい」タイプの人には、XM Tradingのように口座タイプの選択肢が広い業者も比較対象になります。どちらにしても、条件は自分の保有スタイル(何日持つのか)を決めてから比べたほうが早いです。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

今回やったことを整理すると、こうなります。

  • スプレッドは日数で割る。 1日持ち越しは1日あたり1,500円、30日なら50円。短期ほど重い
  • スワップはpipsに換算する。 1日あたり0.3〜1.0pips程度で、日々の値動きの1%前後のスケールでしかない
  • 証拠金拘束は必要証拠金では測れない。 3円の逆行に耐えるだけで必要証拠金の10倍の資金が動かせなくなる
  • 見かけの高利回りは、短い耐久距離の対価。 年利158%は「1円逆行で飛ぶ」と同義

スワップがプラスだと、どうしても「置いておけば増える」という感覚になるんですよね。でも単位をpipsに揃えて並べ直すと、その増え方は日々の値動きに比べてかなり小さい。持ち越すかどうかは、スワップの多寡ではなく、耐久距離を確保できるかどうかで決めたほうがいいというのが、今回計算してみての私の実感です。

この記事の数値はすべて仮の前提での試算なので、ぜひご自身のロット数・レバレッジ・ストップアウト水準に置き換えて計算してみてください。式さえ分かっていれば、電卓でも十分出せますので。