「スワップ-15」は何円なのか|MT5の計算方式10種を公式リファレンスで読んだら、同じ表示値が1,000倍違った

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業者のスワップ一覧を2社ぶん並べて、「こっちのほうがマイナスが小さいからお得だな」って判断したこと、ありませんか。私は普通にやってました。

で、これが結構まずいんですよ。というのも、MT5のスワップの表示値には、そもそも共通の単位が決まっていないんです。業者が選んだ「計算方式」によって、同じ数字が円なのかドルなのかポイントなのか年率なのかが変わる。単位が違うものを大小比較していたわけで、正直ちょっと青くなりました。

今回はMQL5の公式リファレンスから計算方式の定義を全部引っぱってきて、同じ表示値がモードごとに何円になるのかを自分で計算してみました。結果、最大で1,000倍の開きが出たんですよね。

公式リファレンスに「単位は方式で決まる」と書いてある

まず根拠から。MT5の銘柄プロパティを定義しているページに、こう書いてあります。

The method of swap calculation determines the units of measure of the SYMBOL_SWAP_LONG and SYMBOL_SWAP_SHORT parameters.

出典: MQL5 Reference / Symbol Properties(ENUM_SYMBOL_SWAP_MODE の説明)

SYMBOL_SWAP_LONGとSYMBOL_SWAP_SHORTが、いわゆる「買いのスワップ」「売りのスワップ」として画面に出てくる値です。その単位は、銘柄ごとに設定された計算方式(SYMBOL_SWAP_MODE)を見るまで確定しない、と公式が明言しているわけなんですよね。

つまり「-15」という数字単体には、情報としての意味がほぼないんです。

計算方式は10種類ある

公式リファレンスのENUM_SYMBOL_SWAP_MODEには、10個の値が定義されています。全部並べるとこうなります。

識別子 公式の定義(要約) 表示値の単位
SWAP_MODE_DISABLED スワップなし —
SWAP_MODE_POINTS ポイントで課金 ポイント
SWAP_MODE_CURRENCY_SYMBOL 銘柄の基軸通貨建ての金額 基軸通貨
SWAP_MODE_CURRENCY_MARGIN 銘柄の証拠金通貨建ての金額 証拠金通貨
SWAP_MODE_CURRENCY_DEPOSIT 顧客の口座通貨建ての金額 口座通貨
SWAP_MODE_CURRENCY_PROFIT 損益計算通貨建ての金額 決済通貨
SWAP_MODE_INTEREST_CURRENT 計算時点の価格に対する年率(銀行年360日) %/年
SWAP_MODE_INTEREST_OPEN 建値に対する年率(銀行年360日) %/年
SWAP_MODE_REOPEN_CURRENT 終値±指定ポイントで建て直す ポイント
SWAP_MODE_REOPEN_BID 現在Bid±指定ポイントで建て直す ポイント

ざっくり「ポイント系」「金額系」「年率系」「建て直し系」の4グループと覚えるといいと思います。やばいのは、金額系の中でもどの通貨なのかが4通りに分かれているところなんですよね。基軸通貨・証拠金通貨・口座通貨・決済通貨で全部別の識別子が用意されています。

同じ「-15」を全モードで円に直してみた

じゃあ実際どれくらい違うのか。USD/JPYを1ロット(契約サイズ10万通貨)、現在値150.000、建値140.000、1ドル150円として、表示値が「-15」だったときの1日あたりの金額を計算しました。

定規・天秤・メスシリンダー・ノギスが並んだ、単位の異なる計測器具
モード 1ロット1日 内訳
DISABLED 0円 付与されない
POINTS(小数3桁の銘柄) -1,500円 15 × 0.001 × 100,000
POINTS(小数2桁の銘柄) -15,000円 15 × 0.01 × 100,000
CURRENCY_SYMBOL(USD) -2,250円 15ドル × 150
CURRENCY_MARGIN(USD) -2,250円 15ドル × 150
CURRENCY_DEPOSIT(円口座) -15円 そのまま円
CURRENCY_DEPOSIT(ドル口座) -2,250円 15ドル × 150
CURRENCY_PROFIT(JPY) -15円 そのまま円
INTEREST_CURRENT -6,250円 150 × 100,000 × 15% ÷ 360
INTEREST_OPEN -5,833円 140 × 100,000 × 15% ÷ 360
REOPEN_CURRENT / BID -1,500円 ポイント相当

最小が15円、最大が15,000円。同じ「-15」という表示で、1日のコストが1,000倍違います。

しかも注目してほしいのが、同じPOINTSモードでも銘柄の小数桁数で10倍変わるところなんですよね。1ポイントは最小価格単位なので、USD/JPYが150.123と表示される業者と150.12と表示される業者では、同じ「15ポイント」の重みが全然違う。ここは方式だけ見ていても足りなくて、桁数まで見ないといけないんです。

POINT

スワップの数字を業者間で比べるなら、見るべきは表示値そのものではなく「方式・単位・小数桁数」の3点セットです。この3つが揃わない比較は、センチとインチを混ぜて長さを比べているのと同じなんですよね。

逆引きすると、同じコストが全然違う数字で表示される

逆方向からも見てみます。「1ロット1日150円」という同じコストを、各モードで表示するとどんな数字になるかです。

モード 表示される数字
POINTS(小数3桁) -1.5
POINTS(小数2桁) -0.15
CURRENCY_SYMBOL / MARGIN -1.0
CURRENCY_DEPOSIT(円口座) / CURRENCY_PROFIT -150
CURRENCY_DEPOSIT(ドル口座) -1.0
INTEREST_CURRENT -0.36
INTEREST_OPEN -0.3857

-1.5、-0.15、-1.0、-150、-0.36。中身は全部まったく同じ150円です。

この表を作ってみて、自分がやっていた比較の雑さに、正直ちょっとへこみました。「-150はさすがにデカいな」と思って避けていた業者が、実は「-1.5」の業者とまったく同条件だった可能性があるわけなんですよね。

3倍デーは「水曜固定」ではなく曜日ごとの倍率で設定されている

もうひとつ、公式リファレンスを読んで面白かったのがここです。

卓上カレンダーの特定の曜日に手書きで丸印が付けられ、万年筆が置かれている様子

MT5にはSYMBOL_SWAP_SUNDAYからSYMBOL_SWAP_SATURDAYまで、曜日ごとに独立した倍率のプロパティが7つあります。公式の定義では「その曜日から翌日へ持ち越すぶんの倍率」で、取りうる値は0(課金なし)・1(1倍)・3(3倍)と明記されています。

よく見る「水曜が3倍デー」というのは、この7つのうち水曜だけに3が入っている状態にすぎません。つまり業者が木曜に3を置くこともできるし、どこにも3を置かないこともできる、というのが仕様レベルの話なんですよね。

で、ここからが本題です。一般的な設定の倍率を全部足すと、こうなります。

プロパティ 持ち越し 倍率
SYMBOL_SWAP_SUNDAY 日→月 0
SYMBOL_SWAP_MONDAY 月→火 1
SYMBOL_SWAP_TUESDAY 火→水 1
SYMBOL_SWAP_WEDNESDAY 水→木 3
SYMBOL_SWAP_THURSDAY 木→金 1
SYMBOL_SWAP_FRIDAY 金→土 1
SYMBOL_SWAP_SATURDAY 土→日 0

合計は7。週に5回しか課金しないのに、合計が7になるよう組まれているんです。これを年換算すると7 ÷ 7 × 365.25 = 365.25日ぶん。つまり3倍デーは「おまけの出費」ではなく、週末ぶんの金利を回収して暦どおりにするための帳尻合わせなんですよね。

ここが分かると、倍率の置き方が変わったときの影響も計算できます。

倍率の置き方 週合計 年換算 暦比 年間コスト(1回150円)
水曜3倍(一般的) 7 365.2日 100.0% 54,788円
木曜3倍 7 365.2日 100.0% 54,788円
3倍デーなし(全部1倍) 5 260.9日 71.4% 39,134円
3倍デーが2日(週9倍) 9 469.6日 128.6% 70,441円

3倍デーが無い銘柄は、同じ表示値でも年間負担が約3割安いことになります。逆に3倍デーが2日ある銘柄は約3割高い。マイナススワップを払う側なら前者が得ですし、受け取る側なら逆です。表示値だけ見ていると絶対に気づけない差なんですよ。

年率モードには「分母360日」の罠がある

細かいですけど、金利系の2モードにはもうひとつクセがあります。公式リファレンスが「standard bank year is 360 days」と明記しているとおり、年率を日割りするときの分母が360なんですよね。

でも先ほど見たとおり、倍率の合計が7の設定だと年間の課金回数は約365.25回あります。分母が360なのに365回払う。差は365.25 ÷ 360 = 1.0146倍です。

仮に名目年率3%・想定元本1,500万円(USD/JPY 1ロット相当)だと、1回あたり1,250円。これが年365.25回で約456,562円になります。名目どおりの3%なら450,000円なので、約6,562円(+1.46%)多く払う計算になるんですよね。

金額としては小さいですけど、「表示されている年率より実際の年間負担のほうが1.5%ほど重くなる」という構造は知っておいて損はないと思います。受け取る側なら逆に少しだけ得です。

注意

今回の計算方式・倍率・分母の定義はMQL5の公式リファレンスから取っていますが、どの方式を使うか・どの曜日に3を置くかは業者と銘柄ごとの設定で、業者側の判断でいつでも変わります。本記事の表は「その方式ならいくらになるか」の換算表であって、特定業者の条件を示したものではありません。実際の値は必ずご自身の口座の仕様画面と各社公式サイトでご確認ください。

自分の口座の方式を確認する方法

残念ながら、計算方式(SYMBOL_SWAP_MODE)はMT5の「仕様」画面には素のままでは出てこないことが多いです。ただ、確認する道はあります。

  • 仕様画面の「スワップ」の行の単位表記を見る。「ポイント」なのか通貨コードなのか年率(%)なのかが書かれていれば、それがそのまま方式のヒントになります
  • 3倍デーの曜日も仕様画面に出ます。ここが水曜でない銘柄があれば、曜日倍率が個別設定されている証拠なんですよね
  • 一番確実なのは実測です。最小ロットで1枚だけ建てて1日持ち越し、履歴に出たスワップの金額を表示値と突き合わせる。これをやれば方式が何であれ「表示値1あたり何円か」が確定します

私も気になる銘柄で小さく持ち越して突き合わせてみたんですけど、この「表示値1あたり何円か」を一度メモしておくと、以後のコスト見積もりが一気に楽になると感じました。方式を推測するより、換算係数を1個実測してしまうほうが早いんですよね。

この観点で業者を見るなら

スワップを気にする前提で業者を見るなら、ポイントは2つだと思います。1つは、スワップの単位と3倍デーの曜日が仕様画面やサイト上で明示されているか。ここを隠していない業者は、そもそも比較される前提で条件を作っているはずなんですよね。

もう1つはスワップフリー口座の有無です。方式がどうであれ、付与されなければ換算の話が丸ごと消えるので。複数の情報源で確認した限りでは、Exnessはスワップフリー(無期限のものを含む)を扱っていると紹介されています。ただ対象銘柄や適用条件は変わりやすい部分なので、最新の条件は公式サイトで必ず確認してください。

FX取引はレバレッジを用いた取引であり、預けた資金(元本)を上回る損失が生じる可能性があります。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資を勧誘するものではありません。取引を行う際は自己責任・余裕資金の範囲で行い、各社公式サイトで最新のリスク説明書・規約を必ずご確認ください。

まとめ

MT5の公式リファレンスを読んで分かったことを並べます。

  • スワップの表示値に共通の単位はない。公式が「単位は計算方式が決める」と明言している
  • 計算方式は10種類。ポイント系・金額系(通貨4種)・年率系・建て直し系の4グループ
  • 同じ「-15」が15円〜15,000円(1,000倍)の幅になる。同じPOINTSモードでも小数桁数で10倍変わる
  • 同じ1日150円が -1.5 / -0.15 / -1.0 / -150 / -0.36 と表示される。数字の大小比較はほぼ無意味
  • 3倍デーは曜日ごとの倍率(0/1/3)。週合計7で暦365日ぶんになる帳尻合わせで、合計が5なら年間負担は約3割安い
  • 年率モードは分母360日なのに年約365回課金されるので、名目年率より約1.5%重い

スワップって「業者が決めた数字を受け取るだけのもの」という感覚だったんですけど、調べてみたら設定項目がかなり細かくて、比較するなら表示値ではなく換算係数を見るべきものでした。

こういうのって、仕様書を一度読むだけで見方が変わるんですよね。スワップ一覧を眺めて悩んでいる時間があるなら、最小ロットで1日持ち越して係数を1個実測するほうが、たぶん早くて確実だと思います。

データ出典: MQL5 Reference / Symbol Properties(ENUM_SYMBOL_SWAP_MODE・SYMBOL_SWAP_SUNDAY〜SATURDAY・ENUM_SYMBOL_CALC_MODE)。2026年10月23日に取得。金額は本文記載の前提(USD/JPY 1ロット・契約サイズ10万・現在値150.000・建値140.000・1ドル150円)に基づく当サイトの計算。